イメージは「横向きに動くエレベータ」、都市型ロープウエイ

都市部でのモビリティを考える場合、地上だけでなく空中を利用する考え方もある。高架鉄道やロープウエイがそれ。特に、「ところどころに支柱と乗り場を設ければ済むロープウエイは、建造物や坂道が多い場所、川や運河がある場所では有力な候補」(横浜国大の中村副学長)になる。さしづめ、街の上を横向きに動く「空のエレベータ」である。

イメージはこうだ。複数のカーゴが数十秒~数分程度の間隔で次々にやってくる。鉄道などのように車両が来る時刻は決まっていないが、途切れることなく来るため、目の前に来たカーゴに乗り、目的地となる駅で扉を開けて降りるだけである。

1台のカーゴに乗れる人数は多くないし、支柱間の移動速度も決して速くない。それでも、頻繁に来るエレベータで、渋滞をショートカットできる乗り物だと考えれば魅力はある。風に弱いとも言われるが、2本のケーブルを利用するなど方式次第では、鉄道より風の影響を受けにくくすることもできる。

(写真2)都市型ロープウエイも一つの選択肢 写真はNYのルーズベルト・アイランド・トラム
(写真はWikimedia Commonsより引用)。

ロープウエイと聞くと、山岳地帯にある観光目的の乗り物を思い浮かべるかもしれないが、例えば米国ニューヨーク市にはルーズベルト島とオフィス街を結ぶ「ルーズベルト・アイランド・トラムウエイ」というロープウエイがあり、川を渡る通勤用のモビリティとして利用されている(写真2)。コロンビアのメデジン市では、区画整理や治安の問題などでなかなか道路の整備ができないスラム街の上をロープウエイが通っている。

実は東京都内でも、ロープウエイを利用するアイデアがある。江東区が2015年6月に発表した「江東区オリンピック・パラリンピックまちづくり基本計画」には「湾岸ロープウェイ」の構想が盛り込まれている。江東区の場合は観光資源としての要素が大きいが、川や坂が多い都市では、いくつもある移動手段の選択肢として、都市型ロープウエイが導入される可能性はある。

都心で必要な短距離モビリティ

都心では、短距離移動のモビリティにも課題がある。地下鉄の路線が増えるごとに駅が地下深く潜っていき、その結果、地上の入り口からホームにたどり着くまでに5分以上かかる駅も少なくない。一駅程度の距離であれば、電車で移動している時間よりも地上とホームを行き来している時間の方が長いといった場面もあるだろう。

そういった都心での短距離移動に関しては、独ダイムラーが欧米で展開しているcar2goのようなカーシェアリングのサービスに期待したい。car2goでは街中にある公共の駐車場に車が置かれていて、利用したい時にスマートフォンなどで最寄りの車を検索しICカードをかざして乗車、到着後はまた公共の駐車場に乗り捨てができ1分40円程度で利用できる(写真3)。日本でもトヨタや日産が、1人乗りの超小型EVを使ったカーシェアリングに力を入れ始めた。

(写真3)独ダイムラーが提供している電気自動車のシェアリングサービス「car2go」

近距離の移動向けでは、セグウェイ、サイクルシェアなど、手軽な手段もある。これらもビジネスモデル次第で街中に広がっていくかもしれない。

ただ、利用者の幅の広さを考えると、これでも十分とは言い切れない。都市部でも高齢者の増加は深刻な問題。高齢者にとっては自宅から商店街や駅に行くまでの、ほんの数百mほどの短距離移動でさえも負担となる。高齢者でも操作可能なパーソナルモビリティは魅力的だろう。

その片鱗が見えるのが、千葉市は幕張新都心のプロジェクトだ。同市は、ロボットタクシーと並行して超小型パーソナルモビリティも導入を進める。目的は、オリンピック・パラリンピック開催時に来訪者に便利な交通手段を提供することと、将来的に高齢化が進んだときの移動弱者対策である。同地域は歩道の幅が広い場所が多いため、一部をパーソナルモビリティ用に作り変える。パーソナルモビリティは時速10km程度と低速だが、新都心内の移動を容易で楽しいものに変えられるとしている。