窓×IoTから生まれる「人にやさしい」生活空間

建築の進化は、デザインなどの見た目の変化にとどまらない。もう一つの流れはIoT(Internet of Things)や音声認識、人工知能(AI)といったハイテクを活用することによる機能的な進化である。センサーを使った高齢者などの見守り機能を備えた家を想像すると分かりやすいだろう。スマートフォンで磨かれた音声認識技術を実装すれば、言葉による指示で家が住人のリクエストに応えるような仕組みも実現できそうだ。

それを具現化したものの一例に、「未来窓」がある。

窓そのものをセンサーにすれば、住空間体験がより豊かになるのではないか。この考えに基づき、YKK APが発案し、開発に取り組んでいる。

未来窓は「10年後の未来の窓」をテーマとし、第1弾として「M.W.(MODULE WINDOW)」なるコンセプトモデルを発表した。東京・品川の体感ショールームに「映しの窓」「光の窓」「空気の窓」として展示されている。実はこの未来窓は、素材を含め窓そのものの技術的な進歩があってこそ実現される。従来のアルミサッシなどとガラスといった組み合わせの窓では、冬場は結露することが多く、IoTを組み合わせるのには適さない。この点、最近増えてきた樹脂製サッシと複層ガラスという組み合わせにすると、断熱性がぐんと高まる。これにより、センサーなどを埋め込んで利用しやすい環境が出来上がる。

M.W.(MODULE WINDOW)のイメージ

コンセプトモデルには、窓枠にタッチセンサー、気圧センサー、カメラ、照度センサー、風速センサー、指向性マイクなどの各種センサー類を埋め込んである。そして、枠に触れるだけの直感的な操作に「窓が応える」。

映しの窓では、時計、天気情報、画像、騒音レベルなどの表示に加え、テレビを視聴できたり、外の風速に合わせてデジタルカーテンを揺らしたり、スマートフォン(スマホ)画面のように窓をキャンバスにペイントしたりできる。光の窓ではブラインドをデジタル化し、枠をなぞるだけで光量を調整可能。太陽光の屈折角を変化させ、部屋の任意の場所に光を集められる工夫も施した。さらに空気の窓は、離れた場所からジェスチャーで窓が開けられる。その操作感は、さながらマジックのようだ。

映しの窓で時計を表示したところ。操作は窓枠のタッチで行う
空気の窓を遠隔ジェスチャーで開いている様子。操作するのはYKK APの東氏

YKK AP 経営企画室 事業開発部長の東 克紀氏は「ここ数年でスマホが普及。親しみやすいデバイスが誰も気にしていない窓に搭載されたら一体どんな反応を示すのか、その思いがヒントになった。同時に、窓自体が“目”になるべきと考えた」と話す。現在のコンセプトではカメラを活用した防犯・監視機能、ヘルスセンサーによる見守り機能なども視野に入れている。「今後は危険を察知したり、個人の特性に合わせて光の量を自動調整したりと、AI的な機能も必要になるだろう。窓が人の動きを読めるようになると面白い」(東氏)。

こうなると、窓が人の動きを読み、光量や空気の流れを調整するような建物もイメージできる。リビングやベッドルームはもとより、バスルーム、トイレ、玄関など住居のあらゆる場所で建物自身が情報を収集し、快適な空間を演出するわけだ。通信機能やディスプレイとしての機能を持つことを考えると、窓は、建物内の各種設備だけでなく、街とのインタフェースにもなり得る。さらに、窓を透明な断熱材と捉えれば、壁全体をガラス張りにするなど、新たな建築デザインが台頭してくる可能性もある。