デバイス一新で実用化に向けて加速

その他のEH技術の中にも新たな潮流はある。光EHがそうだ。1970年代のソーラー電卓など光EHは早い段階から進められた。だがこれらに使用されてきたのは、主に屋外太陽光での使用を前提とする太陽電池で、十分な光量と比較的ブロードな(さまざまな波長を平均して含む)特性が必要だった。

一方、EHでは様々な状況やあらゆる時間帯での常時給電が望ましい。室内照明の蛍光灯やLEDなど、特定波長だけの光や、曇天や薄暮などの低照度環境での発電性能が求められる。さらに小型軽量化を含め形状の自由度や低コスト化も課題だ。

このような要求性能の違いから、EHで注目されているのが、色素増感太陽電池(DSC:Dye Sensitized Solar Cell)である。受光部分の素材に各種の色素を吸着させ、光を受けた色素が放出する電子を回路に供給して電力とする(図2)。シリコン単結晶やCIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物半導体)など屋外用として普及している太陽電池に比べて構造がシンプルで、シリコン材料と違って高温プロセスなしで安価に製造できる。材料を塗布すれば形成できるため形状の自由度が高い。色素のバリエーションにより波長への対応力が大きいといった利点もある。

(図2)色素増感太陽電池の仕組み

課題は現時点で十数%という変換効率の低さだが、素材や構造の改良で徐々に向上しつつある。低照度や室内照明での性能をうたうユニット製品も登場している。現在の太陽電池で対応しきれない環境での光EH実現に、大いに期待が膨らむ。

熱EHでも新技術がデバイスを一新する。2016年注目を集めた、“体温で動くスマートウォッチ(MATRIX PowerWatch)”のようなものだ。これらは、半導体のpn接合部に温度差を与えることで電圧が発生する熱発電素子(熱電素子)を使っている。

熱電素子のポイントは、熱を効果的に利用するための半導体の構造にある。この点で、新機軸を打ち出しているのが独Micropeltである。従来の熱電素子は、p型とn型をギリシャ文字のπの形で交互に連結する構造のものが多かった。これに対してMicropeltは、微細加工技術によって1平方mm当たり100個以上の微小突起を半導体表面に作り込む。こうすることで、温度差15℃で2.5平方mm程度あたり約1mWの発電量を実現したという。

国内ではパナソニックがNEDOプロジェクトで開発した「熱発電チューブ」に期待が高まっている。熱発電材料として一般的ではあるものの加工が難しかったBiTe(ビスマス・テルル)を用い、従来の熱電素子とは異なるらせん状の構造を実現した(図3)。配管自体が発電することで熱のロスを低減できるなどの利点も加わって、設置面積換算で太陽光発電の約4倍に匹敵するという高効率を達成した。長さ10cmで1.3Wを取り出せる性能を持ち、EHだけでなく地熱発電などにも応用可能とされる。

(図3)パナソニックが開発した熱発電チューブ

EHデバイスの小型効率化、消費電力低減、そしてエネルギー源や収穫方法の多様化は、今後もチャレンジが続く。その進歩とともにIoTが社会に浸透していくことになるはずだ。