アースアイズの特徴の一つは、ビデオに映る人の行動パターンを識別する点。不審人物に特有な行動パターンをデータベースとして持ち、それに合致する人物がいる場合には、店員や警備担当者に警告を出せることだ。具体的には、店舗の様子を撮影した映像で、歩いていこうとする方向とは逆の方を何度も振り返ったり、周囲を見回したりしている人物がいれば、システムが不審人物としてマークする。顔認証には他社の既存技術を使うものの、行動パターンを識別することで、一歩先の見守り/監視を実現している。

この仕組みの基盤となる画像解析も特徴的である。アースアイズは、システムを設置する際、監視対象の場所を撮影した画像データを基に、背景のグリッド状のマップを作る。運用時には、撮影したビデオ画像を、このグリッドに照らし合わせることで、人物の位置を高精度で把握する(図3)。同時に、モーションセンサーを使って人の動きも把握する。従来の多くの画像解析技術では、カメラの画像を2次元データでしか捉えられず、人物が重なった場合には、どちらの行動なのかを識別できなかった。アースアイズの場合は、床の位置や人の動きを映像とひも付けることで、個人の動きを細かく捉えられる。

(図3)人物の位置関係を把握するためのグリッド(上)と関節の動きによる動作解析(下)

この仕組みは、店舗での防犯用に役立つほか、危険な作業を伴う工場での作業員の安全見守り用などでも効果を見込める。危険な設備に無防備に近づいた場合に、即座に警告を出す、といった使い方だ。

家庭内での見守りの場合なら、高齢者がベッドから落ちたり何かにつまづいて転倒したと画像から判断されたら、アースアイズが「大丈夫ですか」と声をかけるようにしておく。その問いかけに反応がなかったら、あらかじめ登録した家族に知らせる。画像解析だけで転倒を判断させると、屈んでものを拾ったりする際にも転倒したと誤認識する場合がある。「声をかけて確認することで、システムの誤認識を減らすことができる」(アースアイズ代表取締役 山内三郎)。

音センサーも役立つ。ガラスが割れる音や鍵がこじ開けられるような不審な音に反応し、音がした方向にカメラを向けてズームインし、詳細に様子を確認するといった具合だ。そこから不審者が侵入してきたら、警報を鳴らしたり登録した連絡先に通知したりする。また、将来的に赤ちゃんの泣き声に反応できるようになれば、離れた部屋での子供の見守りが可能になる。

自動販売機や電柱が街の見張り番に

人々の安全安心な生活を見守ってくれるのは、カメラだけではない。IoTデバイスの普及によって、街中にあるさまざまなものが見守りに利用されようとしている。子供や高齢者にビーコン端末を持たせ、地域で見守っていく仕組みだ。

墨田区で6月から実証実験が始まったのが、アサヒ飲料と情報通信研究機構(NICT)が共同で行う、自動販売機を利用した見守りサービスだ(図4)。墨田区内に設置しているアサヒ飲料の自動販売機のうち約100台にIoT無線ルーターを搭載し、情報中継拠点や情報発信拠点となる地域ネットワークを構築。ビーコン端末を携帯した子供や高齢者が自動販売機の近隣を通れば、それぞれの位置情報履歴や活動状況などが、家族のスマートフォンやパソコンに伝わる。実用化の目途がたったら、墨田区民にビーコン端末を貸与し、見守りだけでなく「交通安全」「観光案内」などのサービスも展開していく考えだ。交通安全のサービスでは、見通しが悪く飛び出し事故の多い交差点付近を走っている子供の存在を、通りかかる車両にいち早く通知することを実現させる。

(図4)墨田区での実験による見守りのイメージ(アサヒ飲料のホームページより抜粋)

渋谷区と東京電力ホールディングスも、6月よりビーコン端末(写真2左)を使った見守りに関する実証実験を開始した。ビーコン端末の電波を受信する基地局には、電源コンセントにさすだけで設置できるコンパクトなデバイスを使用(写真2右)。基地局は対象エリア内の公共施設や民間施設、電信柱などの東京電力グループの設備だけでなく、無料アプリをインストールしたスマートフォンも基地局として利用される。墨田区の実証実験と同じように、ビーコン端末を持つ子供や高齢者の位置情報履歴を、家族がスマートフォンやパソコンで把握することができるほか、あらかじめ登録した場所を見守り対象者が通過した場合に、位置情報をメールで確認することも可能。今回の実験では、都心部である渋谷区においてどのくらいの基地局を必要とするかを検証する。

(写真2)渋谷区の実験で使われるビーコン(上)と基地局(下)(東京電力ホールディングスの資料より抜粋)