人の動きや呼吸を見守るベッド

日常的な高齢者の見守りにも変わった手段を使うものが登場している。従来、見守り用として多く見られた手段は、ウエアラブルデバイスなどの接触型センサーを使うか、カメラで映像を撮影するかだった。ただ、接触型センサーは利用者に精神的・肉体的な負担がかかる。一方、カメラはプライバシーの問題から設置場所を制限されがち。死角も生まれやすい。赤外線センサーや電波センサーによる見守りもあるが、検出精度を上げるために専門的なスキルが必要で、設置自体が難しいケースが多い。

こうした課題を踏まえて産業技術総合研究所(産総研)が開発したのが、非接触式の静電容量型フィルム状近接センサーである。人の目に触れないところに設置し、使用者に精神的・肉体的な負担をかけることなく体の動きや呼吸の様子を見守ることができる。

フィルム状センサーの良さは、印刷技術によって低コストで大量に製造できる点と、壁や床などさまざまな場所に貼り付けられる点である。モノの裏側に貼り付けることで目立たないようにセンサーを配置でき、自然な形で人の動きを把握できる。動作原理自体はスマートフォンやタブレットなどで用いられる静電容量型のタッチパネルとほぼ同じだが、今回開発されたフィルム状近接センサーは、触れなくても接近するだけで静電容量が変化するため、非接触で人の生活行動を読み取れる。

例えば人が横たわる範囲の床下にセンサーを敷いておくと、どの位置に人が横たわり、どのように移動しているのか(寝返りしたのかなど)を把握できる。呼吸する際に生じるわずかな体の動きも検知でき、周期的な変動を見ることで呼吸の状況を把握して、就寝状態にあることなども判断できる。離れて暮らす一人暮らしの親の生活行動が、プライバシーを侵害することなく把握できる。今後は、センサーから集めた測定データをもとに、事故や病気の予兆を捉える技術を確立し、自宅での高齢者の見守りに運用できるシステムの構築を目指している。

(図2)フィルム状近接センサーによる見守りのイメージ
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(図2)フィルム状近接センサーによる見守りのイメージ
(産業技術総合研究所のホームページより引用)

宇宙から地球の健康も見守り

スケールの大きな見守りとしては、地球全体の見守りと呼べそうなものがある。人工衛星で地球を観測する「衛星リモートセンシング」だ。海、森、都市、雲などによって反射したり、自ら放射したりする電磁波を受信し、そのデータを基に、森林伐採や砂漠化、農作物(水田)の状況から、ヒートアイランド現象、ダムの貯水量、洪水の被害状況など、地球で起きているさまざまな事象を観察している。最近では、ドイツ航空宇宙センター(German Aerospace Center)によって打ち上げられた2基の人工衛星が、5年間かけて地球の正確な3Dマップを作った(写真2)。

(写真2)地球の変化を見守る3Dマップ
(写真2)地球の変化を見守る3Dマップ
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エクアドルの火山地帯の様子(ドイツ航空宇宙センターのプレスリリースより引用)

2基の人工衛星は間隔を精密に維持しながら地球を何度も周回し、レーダー装置が同じ領域を少しずつ違う角度でスキャンした。こうやって完成させた3Dマップの誤差は1メートルで、路上のレベルまでズームダウンできれば、大人と子どもの違いまで分かるという。3Dマップのデータサイズは約2.6ペタバイトと膨大だが、研究者は無料で利用できる。

これだけなら、一時的な観測にすぎない。ただ近年、環境の変化がダイナミックになってきたため、今後は8日ごとに地球表面の変化の様子が分かるようにデータをアップデートするという。地球の健康を見守る仕組みと言っていいだろう。