専用の受発光システムの活用で可能になる高速通信サービス

可視光による情報の送信も、屋内で利用されるようなLED照明ではなく専用に設計された受発光システムを利用すれば、さらに応用分野が広がる。例えば東海道新幹線の東京~新大阪間や東北新幹線の一部車両で提供されているWi-Fiサービス。移動中にパソコンを使ってメールのチェックや、情報収集をしておきたいと考えるビジネスパーソンにとってはありがたいサービスである。

ただ、新幹線車内のWi-Fiサービスでは、線路脇に設置されている長大なアンテナ用のケーブルを使って新幹線が外部とワイヤレス通信を行い、それによるインターネット接続を車両内で共有している。この仕組みによって、ほぼ途切れなくデータの送受信が可能になるものの、アンテナ用ケーブル部分の通信速度の制約により、車内で提供できる通信速度は2Mビット/秒程度にとどまる。

そこで現在、多くの人が快適に列車内でWi-Fiが利用できるように、新幹線との通信速度を上げるための方法がいろいろと検討されている。その中の一つが、走行している列車との通信を専用の受発光システムを使って行う可視光通信の利用だ。車外には一定間隔で光デバイスを設置。光デバイスは発光する方向を変えられるようになっていて、これを新幹線の移動にあわせて動かすことで、接続を維持する。実験では既に1Gビット/秒のデータ通信に成功している(写真1)。このため将来的には、Wi-Fi利用だけでなく、グリーン車でのビデオオンデマンドサービスなど、さまざまな車内サービスの展開が可能になる。

(写真1)2010年に行われた時速270キロで走行する新幹線車両と地上間の1Gビット/秒通信の実験(写真提供:慶応義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科)

専用の受発光システムを使った高速通信は、バックホール(基幹ネットワーク)での活用にも期待されている。例えば4Kカメラで撮影した映像を、専用の受発光システムを使って100m以上離れた場所にあるプロジェクターに送るといったことは、既に実現できている(写真2)。有線LANとちがってネットワークの敷設に工事がいらないため、イベント会場での仮設のネットワークとしても期待されている。

(写真2)三技協が開発した大容量高速通信システム「LED Backhaulシステム」
100mの距離で500Mビット/秒のビットレートを可能とする。(資料提供:可視光通信研究倶楽部)

海中での通信にも活用

現在、海中では音波による音響通信が主になっている。これは、海水中では電波の減衰が大きく、音波の方が効率よく通信できるからだ。ただ音響通信の通信速度は10kビット/秒程度と低速なうえ、反射や屈折の影響で音が届きにくい領域があるといった短所もある。また、通信を安定させるために出力を上げると、イルカやクジラなど超音波を使って交信をする生物に悪影響を与えてしまう恐れもある。

この点、可視光は海水塩分の濃度による減衰はほとんど無視してよく、音波よりも安定していて、かつ高速な水中通信媒体となるのではないかと期待されている。海中での高速通信が可能になれば、深海を探索する無人の潜水艇や水中ドローンからの映像をリアルタイムに船上で観測でき、未知の世界と言われる深海の解明に役立つ可能性がある。海底火山の様子なども、離れた場所からリアルタイムに映像で監視できるかもしれない。

また、太陽光発電や波のエネルギーを利用し365日24時間休みなしに海中を観測し続ける海洋探索ロボット同士が可視光通信で連携したり、海面をまたいだ空中のドローンと海中のドローンとが連携できるようになれば、気象衛星から見た空からの情報だけでなく海からの情報も気象予測に活かすことができるだろう(写真3)。

(写真3)LIQUID ROBOTICSが開発した海洋探索ロボット「Wave Glider」
海中を泳ぎ回る機体と海上に浮かぶ機体のペアで構成され、海からのデータを日々通信衛星に送信している。現時点は複数のロボットが単独に行動しているが、複数で連携すればさらに効率のよいデータ収集ができる。(LIQUID ROBOTICSのホームページより引用)