人の流れの予測で快適な屋内空間を制御

不特定多数の人が集まる商業施設や駅、空港などでは、天候やイベントの有無などで人の流れや滞留時間などが大きく変動する。こういった屋内施設でも、さまざまな情報を取得して人の流れを予測し、混雑緩和のための誘導やエリアに応じた空調制御を行うことが必要になる。

日本でこのような取り組みを積極的に進めているのが、日本橋室町エリアだ。同エリアにおいては、三井不動産や野村不動産など複数の事業者が、日本橋室町東地区開発プロジェクトを進めている。三井不動産が事業主となる大型複合施設「COREDO室町」では、2017年2月に清水建設と日本IBMがビーコンによる位置情報を活用して、スマートフォンで来訪者に施設内を道案内するシステムの実証実験を行った。また、8月からは日建設計総合研究所(NSRI)と日本電信電話(NTT)によって、エリア内で取得したセンサーのデータや気象データなどをAI技術を用いて解析し、利用者が快適に感じる空間を提供するプラットフォームの実証実験が始まった(図2)。

こういった取り組みを組み合せれば、天候やイベントの有無などで変動する人の流れや集客を予測し、施設内で混雑が起きる前にスマートフォンで誘導することができる。利用者の趣味嗜好の情報も活用すれば、個人の興味に合わせて効率的に人の流れを作ることもできるだろう。また、施設利用者の人数が事前に予測できれば、テナントとして入る飲食店に、仕入れの量やメニューの構成、人員配置などに役立つ情報が提供できる。

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(図2)NTTグループのAI技術「corevo」による誘導制御のイメージ
(NTTグループのWebサイトから引用)

高精度な位置情報の取得で人の行動を予測

人やモノの位置情報をセンチメートル単位で計測できれば、さらにさまざまな分野での予測に応用できそうだ。総務省が進めている「G空間シティ構築事業」では、2017年10月に4号機の打ち上げに成功した日本の準天頂衛星システム「みちびき」の利活用が進められている。G空間とは「地理空間情報技術」(Geotechnology)のことで、測位や測量技術を使って「いつ? どこ?」という情報を捉えることで、生活や産業に役立てようという事業である。

みちびきを利用したGNSS(Global Navigation Satellite System)では、位置情報の誤差が約10メートルと言われているGPS(Global Positioning System)と併用し、電子基準点を用いて誤差を補正することで誤差数センチという高精度な位置情報の測位を可能にする。これによって、例えば土木工事の現場で自動制御されたブルドーザーの刃先をセンチメートル単位で制御したり、地層のゆがみや波の高さを監視して自然災害の予測に役立てたりといったことを実現できると期待されている。GNSSがスマートフォンでも利用できるようになれば、店舗や施設をピンポイントで紹介するような細やかな情報提供が可能になり、最短で目的地に着けるルートの他、屋根が多いルート、階段が少ないルート、眺めて楽しいルートなど、目的や利用者の希望に合わせたルートのナビゲーションも可能になる。

日常生活の中でGNSSによる正確な位置情報が収集できれば、その人の行動パターンが予測できるようになる。例えば、通勤や通学に関してはルートや時間帯も決まっているので、そのルートの途中で工事が行われていたりして通行が困難な場所が見つかったら、あらかじめ別のルートに誘導する。また、いつも買い物に行くスーパーの近くでセールが行われる情報があれば、その店に誘導する。さらに、正確な位置情報は、都市における人の行動や特定エリアへ向かう流れも把握でき、電車の込み具合なども予測できるようになる。それによって、イベント会場や施設に向かおうとしている人に対して、時間をずらした方がいいなどのアドバイスも送れるようになるだろう。