TerrafugiaもTransitionと並行して「TF-X」という、翼の先端にプロペラがついて垂直上昇ができる空飛ぶクルマを開発している(写真5)。他の空飛ぶクルマと比較してもっとも自動車らしい形状をしているが、開発を始めたのは2013年からで実用化にはまだ時間がかかりそうだ。

(写真5)Terrafugiaの「TF-X」
(Terrafugiaのホームページより引用)

日本でも東京オリンピックを目指して開発が進む

日本でも空飛ぶクルマの夢を実現しようとしている若い集団がある。愛知・静岡・東京を拠点とし、自動車や航空関連の若手技術者、スタートアップ関係の若手メンバーなどが参加して世界最小の空飛ぶクルマの完成を目指す開発集団「CARTIVATOR」(カーティベーター)だ。それぞれが別に本職を持つ有志が結集した一般社団法人(CARTIVATOR Resource Management)として活動しており、2017年5月にはトヨタグループ15社が資金援助(今後3年間で総額4250万円)することを明らかにした。

完成させるクルマのイメージは滑走路がいらないヘリコプタータイプで、一般道路から垂直に上昇して飛行を開始する(写真6)。形状は縦に並んで乗る2人乗りの3輪車で、4カ所にプロペラを配置し、道路走行用と飛行用に別々のモーターを搭載する。ただし、普段から自動車であることを意識させるために道路走行時はプロペラを隠しておき、飛ぶ前に変形してプロペラが表れるような構造を目指している。それでも、大きさは全長2.9メートル、幅1.3メートル、高さ1.1メートルと軽自動車並みのサイズに収める。

他社の構想と異なるのは、エンジンを搭載しない、完全に電動の空飛ぶクルマを目指している点。このため地上走行時の最高速度は時速150キロメートル、飛行速度は時速100キロメートルで、他に見られるような航空機並みの出力はない。当初は主に災害時での救助用車両としての使い方を考えており、最高高度も10メートルくらいまでを想定している。

(写真6)CARTIVATORが目指す空飛ぶクルマ「SKY DRIVE」のイメージ
地上走行時は隠れている4カ所のプロペラが、飛行時に変形して表れる構造を目指す。

自動車の普通免許でも操縦できるように、自動的に姿勢制御が行えるメカニズムを搭載する。具体的にはドローンのように、4つのプロペラの回転数をリアルタイムに調整して機体を安定させる。このプロペラは大きい方が安定性があるが逆にレスポンスが悪くなるため、そのバランスをどのようにとるかで苦労しているという。現在の答えはプロペラを大きくすることなく、縦に2つずつ重ね計8つのプロペラで姿勢を制御しながら移動するという設計だ。

CARTIVATORの計画では、まず2018年1月に無人で試作機の飛行を成功させ、2019年には有人での飛行を成功させる。そして、2020年の東京五輪開会式で採用してもらい、空飛ぶクルマを使った聖火点灯を全世界にアピールするのが最初の目標だ。その後、2025年には災害時の救助用など特殊用途向けに発売を開始し、2030年からはレジャー用など一般向けに量産を開始する予定だ。価格は2025年の段階で500万円を目指している。

新しいコンセプトの乗り物として期待される空飛ぶクルマ

他にも空を飛ぶだけで道路は走れないが、電気を使ったモーターだけで飛行したり、タッチパネルで移動場所を指定するだけで自動操縦による自律飛行ができたりなど、現在の飛行機やヘリコプターとは異なるコンセプトを持った「空飛ぶクルマ」は世界中で開発プロジェクトが進められている(図1)。

(表1)そのほかの空飛ぶクルマの開発例
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米Uber Technologiesも2017年に入って、NASAからの協力による空飛ぶタクシーの開発計画を明らかにしている(写真7)。2020年に飛行実験を行い、実現すれば車で1時間20分ほどかかるロサンゼルス国際空港からステイプルズセンターへの移動を30分以内に短縮する。すでに、ロサンゼルスの不動産会社と着陸ターミナル開発に関する契約を締結済で、2028年のロサンゼルスオリンピック開催を目処に商業化を目指している。

(写真7)Uberが計画している空飛ぶタクシーのイメージ
(UberのYouTubeより引用)