バイオメトリクス認証によるゲートレスの地下鉄利用

“顔パス”を、まさに地で行くのがロンドンの地下鉄である。ここでは、バイオメトリクス認証を利用したゲートレスでの乗降を実現しようとしている。アメリカのCubic Transportation Systemsが開発した「FasTrak」と呼ぶゲートレスシステムを採用。顔認証を利用するシステムで(図1)、毎分およそ65〜75人が通過できるため、混雑時の利用者の停滞が緩和される。

ロンドンの地下鉄では、「オイスターカード」と呼ばれるプリペイド型の交通系ICカードを採用している。日本のSuicaと同様に運賃を精算できる。NFC(Near Field Communitation)にも対応しており、スマートフォンにアプリを搭載して財布代わりに使うこともできる。

利用者はあらかじめ駅にある認証端末で、スマートフォンと顔や静脈などのバイオメトリクス・データをひも付けておく。その後、ゲートのない「Gateless Gateline」のレーンを通るが、その際にはスマートフォンをタップしたり何かに触れたりする必要はない。壁に取り付けられたBluetoothレシーバーが、利用者のポケットやバッグに入っているスマートフォンをスキャンする。

正しく認証された場合は、レーンを通過した後にグリーンのランプが点灯する。他人がスマートフォンを不正に利用しようとした場合や、オイスターカードにチャージされた残高が足りない場合は、赤いランプが点灯して駅員が持つタブレット端末にアラートが飛ぶ。降車駅でも同じようにレーンを通過するだけで、顔認証による乗車情報の確認が行われ、自動的に乗車区間に応じた運賃が精算される。この仕組みによって、利用者はスマートフォンを持っていれば、乗車駅と降車駅のレーンを通過するだけで地下鉄を利用できるようになる。

(図1)バイオメトリクス認証によって鉄道の改札を簡略化する「Gateless Gateline」
(図1)バイオメトリクス認証によって鉄道の改札を簡略化する「Gateless Gateline」
(Cubic Transportation Systemsの公開動画より引用)
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物理的に目に見えるかどうかは別として、“ゲート”を通過する場面は生活のいろいろなところにある。例えば家や自動車のドアもそうだ。費用対効果次第ではあるが、こうしたところ、すみずみにバイオメトリックス認証が浸透していくことは十分考えられる。

家や自動車のドアでの認証で言えば、スマートフォンやICカードを使ったスマートロックと同様だが、スマホやカードを携帯していない場合でも自分さえいれば施錠・解錠できる。自動車の場合は、コネクテッドカー、自動運転車という流れの中で、酒気帯び状態でないか、眠い状態でないかなど、ドライバーの状態を識別する仕組みも搭載されていく。企業内に目を向ければ、執務スペースへの出入り口はもちろん、会議室など設備利用時にも権限があるかどうかのチェックに使える。

こうした仕組みを浸透させるには、利用者に生体情報の登録を促す必要がある。また生体情報は、自分の意志で変更することはできないため、従来のID/パスワード以上にセンシティブなプライバシー情報になる。厳密な管理体制は欠かせない。利便性向上とともに、そうしたインフラ整備も進んでいくはずだ。