個人で制作したコンテンツを世界に向けて販売可能に

もちろん、電力取引だけでなく、ほかの分野の取引システムにもブロックチェーンは適用できる。現在、インターネット上での売買は、たとえ個人同士の取引であってもオークション運営会社やフリーマーケット運営会社に手数料を払い、金銭の授受を代行してもらう。しかし、お互いの素性がわかっていて、取引後も連絡をとりあえる関係であれば、運営会社に手数料を払わず直接取引した方が、売る方側にも買う側にもメリットがあるだろう。

インターネットではSNSやブログなどのサービスを利用すれば、個人でも世界に向けて情報が発信できる。それらのサービス事業者は、広告掲載やショッピングサイトへの誘導、有料オプションなどで利益を得ている。同じような仕組みをブロックチェーンで構築すれば、スマートコントラクトによって個人が世界を相手に取引できるようになるかもしれない。

スマートコントラクトに期待されている新しい価値の創造が、デジタルアセット(デジタル資産)である。個人が制作したオリジナルの動画や楽曲、写真、イラストなどのデジタルコンテンツをインターネットで公開することは簡単だが、それらは簡単にコピーされて不法使用されかねない。そのため、たとえそれらのコンテンツに価格を付けて販売しても、購入者がコピーして大量に拡散してしまえば、コンテンツの価値は下がってしまう。購入する側も同様、簡単にコピーできてしまうコンテンツにお金を払いたいとは思わない。

ブロックチェーンによって、著作者が直接販売したオリジナル・コンテンツ以外は再生したり閲覧できなくなれば、ユーザー側の意識も変わってくるかもしれない(図3)。Ethereum支援団体の一つ「Ethereum Japan」を管理するBaseLayerの競 仁志氏は、「著作者が自由に作品を売買でき、経済的なインセンティブがきちんともらえるようになれば、社会にいい影響を与える」と語る。無名のクリエーターの作品でもきちんとインセンティブが得られるようになれば、アート世界でもユーチューバーのような新しい職業が生まれる可能性もある。

(図3)スイスのMatchpoolはブロックチェーン上でデジタルアセットを開発・流通するサービスに取り組んでいる
(Matchpoolのホームページより引用)

社会課題解決で利用されるブロックチェーン

ブロックチェーンをプラットフォームとして活用する取り組みは、各国で進んでいる。特に北欧のフィンランドやエストニアでは国家レベルでのブロックチェーンの活用が進んでいる。

フィンランド移民局では2015年から難民にプリペイド式のマスターカードを配布している。このカードは通常の銀行取引にも使えるが、ブロックチェーンによって取引が管理されているため、銀行を通さずに個人間でも送金ができる。マスターカードが使える店舗や銀行のATMでも使用でき、光熱費や家賃を支払ったりするほか、雇用主から給与の振込を受けることもできる。移民局はブロックチェーンの公開台帳によって、カードの所有者と支出の動向を把握している。

エストニアで進められている「e-Estonia」と呼ばれる国家プロジェクトでは、国民一人一人に割り振られた国民IDに従って個人の情報がデータベース化されている。エストニア国民はデジタルIDカード(マイナンバーカードのようなもの)を使って、納税から選挙、土地登記、法人登記、公共交通機関の運賃支払に至るまで様々なサービスを利用することができる。