月曜日の朝、オフィスにくると、営業結果をまとめたレポートを提出する業務がすでに終わっている。あとはチェックするだけ。必要なニュースはすでにまとめて到着しており、これも目を通すだけで済む。

新規企画をひねり出すためのブレーンストーミングをやろうと、在宅業務のメンバーに声をかけ、大型ディスプレイボードがある会議室に集まる。顔認証システムで集まったメンバーに加え、在宅者や出張者のホテルからも顔認証でスクリーンを共有する。社外にいるメンバーは、スマートフォンやタブレット、パソコンを見ながら会議に参加。議事録は自動的にまとめられ、本人が操作しなくても各自のデバイスに入る。

いままでのような定型業務はほとんどなく、仕事の生産性を高めた環境。働く人のモチベーションも高まりやすい。これが、未来の働き方の一つのイメージである。

広がり始めたデジタルレイバー

こうした未来に向け、働き方改革、業務改革が叫ばれている。日本における時間当たりの労働生産性は46ドルと低い。1980年から2016年に至るまでずっと、OECD加盟国35カ国中20位あるいは21位を推移してきた(図1)。G7(先進7カ国)の中では1970年以降ずっと最下位だ(参考資料1)。ちなみに1位のアイルランド、2位のルクセンブルグ共95ドルを超えている。

図1 日本の労働生産性は低い 
出所:日本生産性本部

この状況を打開する手立てとして、いま最も注目を集めているのがロボットやソフトウエアを労働力として使う「デジタルレイバー」だ。具体的には、ソフトウエアのロボットであるRPA(Robotic Process Automation)や人工知能(AI)である。これまで人手で進めていた作業をRPAに代わってもらうことで、単純作業に費やした労働時間を減らし、その時間をほかの作業に充てられるようになる。あるいは、人間では複雑すぎたり細かすぎたりして膨大な人手と時間を要する作業をAIに任せることで、労働者は大きな負担から解放される。

ある大手広告代理店では、毎週各店舗から送られてくる広告出稿の予定表を印刷会社向けの予定表のフォーマットに統合する転記作業を週に一度行っていた。あるExcelシートから別のExcelシートへの単純な転記作業だが、全国の店舗から送られてくるファイルは体裁がばらばらで、標準的な自動処理が難しく、作業を終えるまでに約8時間かかっていた。この作業をデリバリーコンサルティング社のRPAツール「ipaS(アイパス)」で夜間にバッチ処理するようにしたところ、翌日出社して30分チェックするだけで済むようになった。RPAツールは約3時間かかるが人間の作業は30分で済むため、実質7時間半/週削減されたことに等しい。年間にして336時間削減されたことになる。

デジタルレイバーは国内でも急浸透

このようにRPAを導入する例は、既に国内でも多く見られるようになってきている。かつて製造工場で作業ロボットアームの導入によって生産ラインの自動化が進んだように、RPAが事務作業を代行するロボットとして働く。人間と違って昼も夜も働き、人間が指定した通りの地道な作業を、愚痴をこぼすこともなく、淡々とこなすRPAは、まさに人が寝ている間に仕事を済ませてくれる“小人さん”だ。

RPAはAIよりもシンプルで、「短期間で実効果が見えるため、取り組む企業が急激に増えた」とビジネスコンサルティング企業のアビームコンサルティングの執行役員でプリンシパルも兼任する安部慶喜氏(図2)は話す。


図2 アビームコンサルティングの執行役員兼プリンシパルの安部慶喜氏

採用状況を調べたレポート「RPA導入企業の実態把握」(日本RPA協会、RPAテクノロジーズ、アビームコンサルティングの3社が2017年1~6月に実施)によると、この期間に3社に対しRPAについて問い合わせてきた企業は3940社あった。このうち既にRPAを導入している企業は210社あった。導入企業で最も多いのはサービス業で33%、次がメーカーと金融でそれぞれ19%。これに情報通信17%が続く。問い合わせてきた業種で見るとメーカーが61%と最大だった。工場はロボットで自動化を図っているメーカーも、事務作業は人手に頼っているケースが多く、これからRPAを導入しようとしている、ということの表れであろう。アビームコンサルティングが支援した取り組み件数は、2015年度下期を基準として、2016年上期は前半期と比べ360%、2016年度下期は前半期比でさらに同380%という勢いで急増し、2017年度上期はさらに加速しているという。