ソーシャルメディアなどを使った遠隔診療、遠隔での投薬をはじめとする治療、服薬支援、スマートフォン向けアプリやウエアラブルデバイスを使った健康管理。医療、健康管理の仕組みは社会インフラに変わる。規制や診療報酬、保険など観点から、今はまだ利用シーンは限定的だが、技術やサービスは、未来の社会に向かって着実に進歩している。

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2015年後半から国内で拡大してきている遠隔診療サービス。医療や健康管理の仕組みが社会全体に浸透していく“ソーシャルホスピタル”の重要な部分である。お薬手帳や健康診断書、血圧がわかるものをスマートフォンやパソコンなどから写真で送信すると、そのデータを医師が見て診断を下し、改善のアドバイスを送ったり、適切な薬剤を処方したりする。テレビ電話などで医師と面談し、健康相談する、あるいは診察を受けるといったものもある。遠隔診療を中心とする“ソーシャルホスピタル”は、技術やサービスの進歩により、いろいろな面で高度化していく。

利用シーン限定でスタートした遠隔診療

現状の遠隔診療には、まだまだ制約が多い。例えば2015年11月にポートが試験運用した「PORTメディカル」は、高血圧症、高尿酸血症、高脂血症をはじめ、約10種類の疾患に限定した遠隔診療だった(写真1)。

(写真1)PORTメディカルのWebサイト

MRTとオプティムによる「ポケットドクター」は、基本的には再診の患者向けのサービスである。メディプラットの「first call」は、診察や処方を行わず、医師への相談のみを受け付ける(写真2)。医師の空き時間と患者をマッチングさせ、テレビ電話をベースとした15分1コマの相談を受け付けるもので、対象も当初は内科、精神科、眼科、整形外科だけである。

(写真2)first callのWebサイト

このように遠隔診療・健康相談のサービス内容は、今のところ限定的である。遠隔診療の場合は、初診ないし、その後の再診の段階で必ず1回は対面診療することが前提となっている。診断の結果、薬を処方する場合など、そのあとで患者の容態が急変する可能性は否定できず、それへの備えとしていつでも駆け付けられる/病院まで搬送できる体制も必要になる。医師とサービス利用者(患者)の間のサービスとしては、当面は高血圧症などの患者を対象とした、かかりつけの医師による再診のために使われるケースが一般的になりそうだ。

ただ、もっと先の未来を考えると、できること、利用シーンが広がっていく。例えば前回(ミライの健康社会が“医療難民”を打開、デジタル技術で病院機能が社会に拡散(1))紹介した、身体データ活用による診断の高度化がその一つ。実際にMRTはニューロスカイジャパンと業務提携し、ウエアラブル活動量計「LifeBeat」で取得したバイタルデータをポケットドクターに取り入れるサービスを開発している(写真3)。データを活用することで、無自覚の情報を医師や医療機関と共有し、深刻な疾病の悪化を事前に検知する狙いである。

(写真3)ポケットドクターでは「LifeBeat」の測定データを活用していく計画(MRTのプレスリリースより引用)

ウエアラブルデバイスではなく、セルフ健康診断の施設を使う方法も考えられる。NTTドコモは中国・上海で、画面の案内に従いながら備え付けの各種センサーや健康管理機器を自分で操作し、健康状態に異常がないかを検査できる「ネットワークヘルスキオスク」(写真4)の実証実験を開始した。身長・体重、血圧、体脂肪や視力・聴力、緑内障や白内障、心電波形、認知症などの検査に加え、呼気によって糖尿病や摂食障害、代謝異常の有無なども検査できる。もちろん、このデータは遠隔診療にも役立つはずだ。

(写真4)上海で実証実験を行っているネットワークヘルスキオスク(NTTドコモのプレスリリースより引用)