スマホのヘルスケアアプリで日常的に健康を管理

これからの医療を考えた場合、遠隔診療・治療と並んで重視されているのが、日常的なセルフケア、健康管理である。疾患を予防できることはもちろん、未病段階で対処すれば、より低コストで、しかも短期間に健康を回復できる。そのためのツールはウエアラブルデバイスやスマホアプリだ。スマホが日常の健康を24時間サポートする――そんな時代がすぐそこまで来ている。

例えば米Vital Connectのウエアラブルデバイス「ヘルスパッチMD」がその一つ。胸部に貼り付けて心電図や心拍数、呼吸状態、姿勢、体表面温度などのバイタル情報を収集する。心拍数、活動量などを記録できる腕時計型デバイスもある。

スマホアプリにも、そうした機能を備えるものが登場してきている。代表例が健康管理、服薬管理、慢性疾患の監視などを可能にする米Appleの「CareKit」で、患者のセルフケアを後押しするツールとして注目されている。CareKitを利用して開発したアプリを使えば、iPhoneやiPad、Apple Watchで服薬状況や病状管理、詳細なバイタルデータを手軽に記録できる。もちろん、それらのデータを医療従事者と共有することも可能だ(図3)。

(図3)米Appleが提供するCareKit
Android同様、オープンソースのフレームワークのため、多くの開発者の参入が予想される。

セルフケアという点では、ほかにも一風変わったアプリがある。日経印刷が提供予定の「ヘルスケアAR」アプリである。同アプリを立ち上げ、症状を入力すると適合する薬をスマホの画面で表示してくれる。さらに、その薬を選択すると、今いる位置から最も近い薬局を提示して、それが陳列されている棚までの道をガイドするとしている。ARは拡張現実のことで、スマホのカメラを向けると、ガイドが重ねて表示される。まさに“薬のコンシェルジュ”と呼べるもので、常に持ち歩くモバイルデバイスだからこそ実現できるソリューションである。

浸透する感染症対策

少し視点が変わるが、健康維持・予防のための仕組みとして感染症対策も、あちらこちらに広がっていく。

例えば蚊を撃退する仕組み。マラリア、ジカ熱、デング熱……蚊は感染症を媒介する厄介な存在である。これを社会インフラ面から解決しようという試みが、米Intellectual Venturesが開発中の「Photonic Fence」である。画期的な“蚊”の撃退方法として注目を集める。建物の周囲にレーザー網を張り巡らせる技術で、同社が公開した動画(実際の動画はこちら)には、レーザーによって蚊が一瞬のうちに焼き殺される様子が収められている。蚊の対策ではシャープの蚊取り空気清浄機も話題を呼び、同製品は東南アジアで高い人気を博しているという。

衛生環境が整った日本では除菌、抗菌、殺菌、消臭分野からのアプローチも盛んである。中でも、よく知られているのが光触媒だ。東芝が手がける光触媒の「ルネキャット」は従来型と異なり、室内の照明などわずかな光でも除菌、消臭効果を発揮し、VOCガス(揮発性有機化合物)を分解・低減できる。シックハウス症候群にも効果がある。既に老舗ホテル、高級和食店、カー用品店、レンタカーショップ、保育園などさまざまな業種で採用されている。

ルネキャットと同じく、室内にスプレーなどで塗布する液状製品がニチリンケミカルによる「セルフィール」。こちらは光を使わない空気触媒と呼ばれるもので、水族館、電車の車両、大阪の市バス、病院、コンビニ、教会などに導入されている。

空気清浄機からのアプローチもある。例えば東日本旅客鉄道(JR東日本)では、2015年11月から運行中の山手線新型車両E235系に、パナソニック独自の微粒子イオン技術「ナノイー」をベースにした空気清浄機を導入した。車両天井部から微粒子イオンを放出するようになっている。

このほか、旭化成の米子会社による殺菌効果を持つ深紫外LEDの「Klaran」、空気質改善をうたう日進産業のセラミック塗材「ガイナ」などもある。これら製品・サービスの充実ぶりはキレイ好きな国民性を如実に反映しているとも言えるが、抗菌はウイルス予防と直結している。今後、さらに多くの領域に拡大していきそうだ。