もちろん、目的地に降り立ったら観光もする。VRのヘッドセットを使って街を散策するなど、“空気”を仮想体験。ほかにも、プロジェクションマッピングやタブレットを使ったさまざまな演出で、都内にいながら海外旅行に行った気分を味あわせてくれる。

現在、アメリカ(ニューヨーク)やフランス(パリ)、イタリア(ローマ)、フィンランド(ヘルシンキ)、ハワイなどの都市を体験できる。さらに、現在の都市への旅行だけでなく、過去に旅をするタイムトラベルといったバーチャルならではの旅行も用意されている。

アバターロボットを通じて世界中でリアルな体験を

バーチャルでの旅行体験をさらに一歩進めようとしているのが、ANAホールディングスが計画している「ANA AVATAR VISION」だ。ANAは、人間の身代わりになるアバターロボットを利用するためのプラットフォームを構築しようとしている。このプラットフォームを利用すれば、世界中のさまざまな施設や観光地などに置かれたアバターロボットにスマートフォンなどからアプリでアクセスし、自宅からでもリアルタイムに海外旅行を体験できるようになる。

アバターロボットには、遠隔操作やハプティクス(触覚)、各種センサー、通信技術などを組み合わせて統合する「テレプレゼンス(遠隔存在感)」と呼ばれる技術が活用される(写真3)。これによって、遠隔地からロボットをリアルタイムに操作し、操作者があたかもその場にいるかのような臨場体験が提供される。アバターロボットによる旅行体験では、釣りやマリンスポーツなど現地でしかできないことをリアルタイムに体験できる(写真4)。

(写真3)メルティンMMIが提供する生体信号処理とワイヤー駆動式ロボットハンドの技術 (メルティンMMIのホームページから引用)
(写真3)メルティンMMIが提供する生体信号処理とワイヤー駆動式ロボットハンドの技術 (メルティンMMIのホームページから引用)
(写真4)遠隔操作技術を使った釣り体験の実験
(写真4)遠隔操作技術を使った釣り体験の実験
釣った魚が手元に届くなど、アバターロボットを通した釣りの楽しみをリアルに再現しようとしている。(写真提供:ANAホールディングス)

アバターロボットによる遠隔操作が実用化されれば、人間が簡単には行けない場所への旅行も可能になる。ANAがJAXAや大分県を始め産官学と連携して進めているプロジェクト「AVATAR X」では、アバターロボットの技術を宇宙空間に生かすための研究を進めている(写真5)。現時点で目指しているのは、月面上のロボットを遠隔操作で動かしたり、地上の医師が宇宙ステーションの患者を遠隔ロボットで手術したりといったこと。つまり宇宙開発・利用関連事業を共創する取り組みであって、一般人向けの宇宙旅行ではない。それでも、この技術が一般に開放されれば、部屋にいながらにして宇宙旅行を体験できる時代が来るかもしれない。

(写真5)ANAとJAXAによる宇宙でのアバターロボット操作のデモ(写真提供:ANAホールディングス)
(写真5)ANAとJAXAによる宇宙でのアバターロボット操作のデモ(写真提供:ANAホールディングス)