社会でロボットが活躍する姿を見ることは、もはや珍しくはない。日常生活でこそまだ一部に限られるものの、自動車産業や電子産業などにおいては、さまざまな製造工場でロボットが部品の組み立て作業や塗装作業などを手伝っている。食品産業においても、回転寿司チェーンなどでロボットが厨房で寿司を握っている店もある。そんな中で、最近期待が高まっているのが人間と一緒に作業する協働ロボット。どのように人間社会の中に溶け込もうとしているのだろうか。

工場などで利用されている、いわゆる産業用ロボットは基本的に、人間と一緒に作業することを想定して設計されたものではない。製造工場で作業をする産業用ロボットは、人間の何十倍もの力を発揮して大きな部品や重量のある部品を持ち上げたり移動させたりする。その作業は危険を伴うため、人間が不用意に近づかないように柵などで隔離した環境でしか動作させない。 また、これまでの産業用ロボットは、決められた作業しか実行できない専用機械として設計されることが多かった。

こういった特徴を持つ産業用ロボットに対して恊働ロボットの特徴は、まず人間と同じ環境、ラインで仕事ができるように設計されていることだ。大きさや重さも重機のようなサイズではなく、小型で軽量、省スペースで運用できる。これよって、人間から隔離されることなく一緒に並んで同じ作業を行ったりもできる。作業も、単一なものではなく複数の異なる作業を、状況に応じて臨機応変に切り替えてこなすことが想定されている。

協働ロボットに期待されているのは、人間ができないことを代行させることだけではない。特に日本では将来的な労働人口不足が心配されており、足りなくなった人間の仕事を補う目的での協働ロボットの活用に期待が集まっている。したがって、従来のように大企業だけが導入できような高価なロボットではなく、中小企業でも導入できる水準の価格で販売されることが想定されている。

人間とロボットの連携作業で工程を効率化

協働ロボットを活用する上で重要なことは、すべてをロボットに委ねるのではなく、人間とロボットが互いの苦手な部分を補完して作業を進めるという、新しい製造のスタイルを模索することだ。

そこで、ロボットの制御ソフトウエアを開発するVeo Roboticsは、市販の3Dセンサーと組み合わせることで人間の作業者と隣接しても安全に連携作業できる協働ロボットを開発している。人間の作業者との間で何かを受け渡すような作業も、安全に遂行できるできるものだ。

ある作業においては、ロボットは人間では不可能な速度で作業台から作業台へと部品を運ぶ。そのそばで、人間の作業員がロボットにはできない複雑な組み立て作業を行う。人間が作業台に運ばれた部品に手を伸ばすと、ロボットは安全のために動作を停止する。人間が組み立て作業を終えて作業台から離れると、ロボットは再び速度を上げて自分の作業を再開する(写真1)。別の作業では、人間では支えきれないような大きさや重さの箱をロボットに持ってもらい、細かい部品の取り付けを行う(写真2)。

このような工程にすれば、さまざまな部品の組み立てや取り付け作業をまとめて行えるため、従来の作業と比べて大きく効率化できるだろう。

(写真1)作業台を挟んでロボットと人間が協働で作業を行う
(Veo Roboticsのプロモーションビデオより引用)
(写真2)重いものをロボットに持ってもらい細かい作業を人間が行う
(Veo Roboticsのプロモーションビデオより引用)

AIの活用でさまざまなものが掴めるように

ロボット・アーム型の協働ロボットならば、箱詰めや包装、値札貼りなどの単純作業を人間と同じラインで行える。狭い場所にも置けて安全性も高い。

とはいえ、人間と一緒に作業するロボットは、人間が持つ曖昧さを吸収しなければならない。人間は機械のように、厳密に決まった位置に寸分違わずにモノを置くといったことはできないし、個々の作業に要する時間も体調や気分などによって左右される。

一方で、柔らかいモノを潰してしまうことなく、そっとつかむとか、所定の場所から動いてしまったモノでも同じように拾い上げる、一様でないモノの集まりの中から特定の形状のモノを選び出すといったことは、曖昧さを理解できる人間だからこそ簡単にこなしている作業である。動きを綿密にプログラミングされたロボットには難しい。

協働ロボットはこういったさまざまな状況に対応できるように作られる。手先の器具や制御するソフトウエアを交換・調整することで、いくつかの異なる作業に対応できる。これなら、導入する企業にとっては、複数の作業ごとにロボットを購入する必要がなくなり、コストを抑えられる。

Osaroが開発したロボット制御ソフトウエアは、ロボットが目の前の物体を認識し、突く、押す、つかむなどした場合に物体がどのような反応を示すかを観察し、その扱い方を自ら決定する。AIアルゴリズムによって、ロボットが経験から学んでいくのである。

通常、ロボット・アームにモノをつかませる場合、あらかじめ対象物のデータを登録しておき、視覚情報とマッチングさせる。このため、個々の物体が重ならないようにしたり、規則的に並べたりといった補助的な作業が必要だった。Osaroのソフトウェアでは、市販のカメラと機械学習を組み合わせることで、ロボットが物体をつかむ方法を効率的に見つけ出す。さらに試行錯誤を重ね、ロボット・アームがさまざまな形状や性質を持つモノをつかんだり、画像から物体を1つずつ認識したりできるようになる(写真3)。

(写真3)Osarogが開発したロボット制御ソフトウェアでは、積み上げられた唐揚げを1つずつ掴んで弁当箱に入れる作業も可能
(OsaroのWebページの動画から引用)