プログラミング不要のVRでロボットに作業を学ばせる

ロボットが受け持つ作業のプログラムは、従来、ハードウエアの開発会社が開発し、最終的な動きを確認しながら微調整して完成させるのが一般的だった。このため、ロボットの導入から運用までにはある程度の時間が必要だった。

しかし協働ロボットの場合、そうもいかない。さまざまな仕事をこなすことを求められるためだ。作業内容が変わるたびに専門の技術者にプログラム変更・調整を依頼するのでは効率が悪い。できる限り現場で実作業する作業員が、そのままロボットに作業を教えられるようにしたい。

こうした点を踏まえてEmbodied Intelligenceが開発しているのが、VR(バーチャルリアリティ)技術を使って協働ロボットに作業を教え込む技術(ティーチング)だ。ロボットに作業を教え込むには、まずVRヘッドセットをつけたオペレーターが、正しい作業動作を行う。この時、ロボットはオペーレーターが見ている画像と同じ画像を見ている。オペレーターが30分ほどこの動作を繰り返し行うことで、ロボットがその動作を学んでいく(写真4)。

(写真4)VRを付けたオペレーターがロボットをティーチング
(カリフォルニア大学バークレーのYouTube動画より引用)

デンソーウェーブがベッコフオートメーションやエクサウィザーズと共同で開発した「マルチモーダルAIロボット」も、ユーザーによるプログラミングを必要としない。ディープラーニングとVR技術を用いて、人が人に作業を教えるのと同じようにロボットに作業を学習させる。

マルチモーダルAIロボットのユニークな点は、VRによるティーチングにリカレント型ニューラルネットワークを採用していることだ。これによって、ロボットは「未来(動作を行った結果)はどうあるべきか」を予測し、そのためにはどう動けばいいかを自律的に判断できるようになる。

例えばタオルをたたむという作業では、単にVRで学んだ動作を再生しているわけではなく、タオルを置く位置や状態によって動作を変えている(写真5)。途中までタオルがたたまれている場合に、その続きからの動作だけを実行するといったことも可能になる。

(写真5)マルチモーダルAIロボットはAIが未来の結果を予測しながら自律的に作業を行っている
(デンソーウェーブのYouTube動画より引用)

協業ロボットによる効率化の鍵は機械と人間の信頼関係

同じライン上で人間とロボットが協働作業するには、実際に安全であるだけではなく、人間の作業員が安全だと感じられる、信頼感も大切である。協働ロボットには、そのための仕組みも実装する必要がある。必要なのは、ロボットに人間の言葉を理解させることである。

人間同士の協働作業では、お互いがかけ声を掛け合ってタイミングを計りながら作業を進める。また、「あれをとって」「そこに置いて」など、抽象的な言葉で相手に指示を出すこともある。こういった言葉をロボットが理解して行動に移せるようになれば、ロボットに対する信頼感を醸成できるだろう。

米ブラウン大学のロボット工学研究室では、協働ロボットに人間の言葉を理解させるシステムの開発に取り組んでいる。例えば、AR(拡張現実)ヘッドセットを利用した実験では、ロボットに口頭で指示を与えた時に、ロボットがどのような行動を計画しているのかをAR画面でビジュアルに確認できる。ロボットが自分の言葉をどこまで理解できているのかが分かるようになれば、よりスムーズに協働作業が行える。