「漁師にきちんと還元される流通システム」の確立を狙う

「漁師さんに利益がきちんと還元されるシステムを確立して、日本の水産業が将来も続くようにしたい」。こう語るのは、ウーオのCOO(最高執行責任者)である万力悠人氏だ。

ウーオの万力悠人(まんりきゆうと)COO。広島県出身。新卒でクックパッドに入社し、食品飲料メーカーのマーケティングサポート業務に従事。その後Cookpad台湾、LINEを経て、2019年1月よりウーオに参画。
ウーオの万力悠人(まんりきゆうと)COO。広島県出身。新卒でクックパッドに入社し、食品飲料メーカーのマーケティングサポート業務に従事。その後Cookpad台湾、LINEを経て、2019年1月よりウーオに参画。

小売店で売られている魚の価格は、漁師が産地魚市場で販売する価格の3倍程度と言われている。つまり、漁師が100円で売ったものを、消費者は300円で買っていることになる。この間に関わっている事業者は平均10社程度。これを当たり前と受け止めるか、それとも「改善の余地あり」と考えるか。ウーオは改善の余地ありと考えた。

万力氏は言う。「漁師さんに話を聞くと、『これまで祖父・父親・自分と3代にわたり漁師を続けてきたが、もう自分の子供には引き継がせたくない』という声が聞かれる。要因として一番大きいのは、労力の割には手取りが少ないからだ」。

沿岸漁業に従事する漁師の年収は200万円程度とも言われている。しかし海という大自然を相手にするので相応のリスクを伴う仕事である。これらの条件だけを見ると、決して仕事としての魅力は高くない。

しかし、我々の食卓に魚が並ぶのは、海に出る漁師がいてこそである。「漁師さんにもっと利益が還元される仕組みを確立したい」(万力氏)という思いでウーオが着目したのは、川上から川下まで年間3兆円が動いていると言われる、魚の流通プロセスである。

元々、漁業は情報を隠そうとする体質が顕著だとも言われている。その不透明さの典型が、仲買業者が卸業者・小売業のバイヤーに提示する情報の出し方だ。

仲買業者は産地魚市場の許認可を得て売買に参加する。魚市場での価格情報を知る人物が少ないという立場を利用すれば、自身に有利な価格条件で売ることが可能だ。魚は足が早い品であるため、勢いバイヤー側は仲買業者の言い値で買わざるを得ない。鮮度や品物のランクについてもバイヤー側には知らされないことが多く、品が手元に届いてようやく分かるというケースも少なくないという。

漁師にもっと売り上げが還元され、かつバイヤー側にもメリットが生まれる取引形態を確立できないか――。そのように考えてウーオが構築したのが、冒頭に紹介したネットを活用した取引システムだ。

先に取引の流れを説明したが、ウーオが設定している相場価格は、「産地魚市場においては比較的高値」(万力氏)という。高値で買い取る理由は、産地魚市場での競り落とし価格がそのまま漁師の手取りに反映されるためだ。

卸・小売のバイヤーがウーオを通じて鮮魚を買うメリットは情報の透明性だ。「相場価格が全バイヤーに対して一律に提示される。また、Webで魚の様子を映像で配信しており、品物の程度が確認できる。この2点でバイヤーが買い付けの判断をしやすくした。バイヤーからは『こういうサービスを待っていた』という声をいただいている」(万力氏)。2019年5月現在ウーオと契約しているバイヤーは30社程度。これも順次拡大していくという。

ウーオのコーポレートマークを彫り込んだ同社本社の看板
ウーオのコーポレートマークを彫り込んだ同社本社の看板

さらなるデジタル化と消費者に向けたブランディングも

今は鳥取港魚市場における買い付けおよび出荷業務を繰り返しながら、値付けのバランスを見極めている最中だ。「漁師さんに還元したいというのが当社の出発点。それが一番の目的だが、ウーオとしても事業継続のための利益を出し続ける必要がある。漁師さん、仲卸や小売のバイヤーさん、ウーオという3者それぞれに最適な値付けのノウハウを探っている」(万力氏)。

並行してデジタル面の強化を進める。2019年5月にプロダクト担当の執行役員(CPO=チーフ・プロダクト・オフィサーの土谷太皓氏、クックパッド出身)を任命した。機能性を高めたWebサイトおよびアプリの開発や、業務プロセスのシステム化に着手する。

ウーオが取り扱った水産物について独自のブランディングも検討していく。例えば自社で取り扱った水産物を「UUUO認証」といった形で表記し、店頭に出回るパッケージにはそのロゴを印刷したラベルなどを貼付する。その水産物が漁師に還元されやすい取引プロセスを踏んだことを知らしめ、消費者の意識喚起を狙おうというものだ。

課題は仕入先となる産地魚市場をどうやって増やしていくか。漁師が魚を水揚げする産地魚市場で競りに参加するには買参権が必要だ。だが、買参権を得る際のルールが各市場で独自に設定されていることもあり、「新規参入者には不透明感が高い」(万力氏)という。現在ウーオが持つ鳥取県賀露港魚市場の買参権は、創業者である板倉CEOの出身地が鳥取で、血縁や知人に漁師が多く、その個人的なつながりを通じて獲得したものだった。

万力氏は「産地魚市場への新規参入は根気がいる作業。だがこれをなんとかクリアして鳥取・広島以外にも拠点を増やし、マーケットを全国に拡大していく」と語る。「当社の出発点である『漁師さんにきちんと還元される漁業』の姿を、この日本に確立したい」(万力氏)。