ゲーム感覚で学べるように

とはいえ、eラーニングはなかなか続かないという声もある。「孤独感が否めず意欲が保ちにくい」「特定の個所でつまづいてしまうと、打開策が見つからずに挫折してしまう」というものだ。

そこでSIGNATE Questではゲーム的な要素を投入し、受講者の学習意欲や興味を喚起し、継続しやすくした。工夫点はいくつかあるが、主なものの1つが「コンペ機能」である。受講者が作成した予測モデルの精度を、eラーニングのシステム側が自動評価。その評価の程度に従って受講者同士でランクを競える機能を備えている。

「フォーラム機能」も備える。これはSIGNATE Quest受講者用のオンライン掲示板である。課題の内容で分からない個所を他の受講者に相談したり、他の受講者がそれに対してアドバイスしたりといったコミュニケーションができるようになっている。いわば、ロールプレイングゲームで出てくる「冒険に出た勇者が情報交換する酒場」といった位置づけだ。

法人向けには受講者のアクティビティを計測・管理できる機能も備える。この機能を使うと、企業の教育・研修担当者は個々の受講者の学習進捗状況を把握でき、より効果的な教育の打ち手を考案できる。

AI開発コンペ運営のノウハウを適用

SIGNATE Questのコンテンツや機能には、SIGNATEがこれまで提供してきたAI活用の企業向けコンサルティングや、SIGNATEが運用しているAI開発コンペティション・サイトでの経験を盛り込んだ。

コンペサイトの運営では、企業がコンペ案件を立案する際に、「AIで何をしたいのか」「どんな業務課題があるか」「それにAIを適用することでどう課題が解決できそうか」「どんなデータを用意すれば会員がAIプログラムを開発できるか」といったことをコンサルティングする。齊藤氏は「このようなコンサルティングをさせていただくと、お客様企業の側に当社のノウハウが移転し、お客様企業におけるAI活用能力が高まっていく実感がある。ここから推察するに、我々のコンサルティングプロセスそれ自体に、ビジネス現場におけるAI活用能力を高めるような教育効果がある」と見る。

こうした実プロジェクトを通じて得たノウハウを盛り込むことで、さらに品質の高い教育コンテンツに磨き上げていくことを狙う。齊藤氏は「当社がお客様企業のリアルなAI課題に向き合ってきた経験を、教育コンテンツに盛り込む。こうしたノウハウを惜しみなく投入し、お客様企業がより早期にAI活用人材が育てられるように貢献していきたい」と語る。

日本のAI人材のレベルを底上げ

日本は少子高齢化が進んでいる。AIやロボットの登場により仕事が奪われるという論調も強いが、現場では人手不足によるやむなき廃業も起きている。「人口が減る中で、その分の生産性を上げなければそもそも事業が維持できない」とする見方も少なくない。

「だからこそのAI活用教育だ」と齊藤氏は語る。「いかに効率的に学んでいただけるか、それがSIGNATE Questのチャレンジだ」(齊藤氏)。

将来的には業界単位、あるいは日本全国における受講者のデータを分析し、個々人の習得レベルを判別できるようにする構想もあるという。言い方が適切かどうかはさておき、偏差値のような形で自分の習得レベルをつかめるようにするイメージだ。

「自分の立ち位置が分かり、そのうえで何を勉強すれば自分の能力が伸びそうかがわかれば、努力しやすくなる。SIGNATE QuestをAI学習者に向けた総合的な学びのガイドとして育てていきたい」(齊藤氏)。