クラウドファンディングやワークショップを広報手段として

――オフグリッド住宅の普及を目指しておられるのでしょうか。

湯浅 僕は、全部の住宅がオフグリッドになるとは思っていません。ただ、オフグリッドの建物が町内にいくつかあれば、自然災害のときに電気ステーションとして機能します。停電時でも、そこへ行けば充電ができる。「自分だけで使うのではなく、災害時には周りの人に充電させてあげましょう」というのが、えねこやのコンセプトです。

そういうコミュニティーの再生に共感を持ってくれる人が増えれば、自助、共助、公助のうちの自助の力で、災害に強い社会に近づくと考えています。

――新たに、太陽光発電と蓄電池で電力を自給する木造のトレーラーハウス「移動式えねこや」を作られましたね。こちらはどういう目的があるのですか。

湯浅 六曜舎の事務所がえねこやの第1号ですが、なかなか第2号ができませんでした。マスコミの取材や環境省の視察も来ましたが、環境意識が高いとか、仕事に関係がある人しか興味を持ってくれないのでは広がりません。そこで、広報活動のために移動式えねこやを作ったのです。とにかく何かきっかけを作りたいから、来てもらえないなら出掛けて行こう、と。移動式えねこやは、走っているだけでも目に付きますしね。

この夏にも、駅前のイベントに持っていき、移動式えねこやの中でエアコンをつけっぱなしでイベントをしました。太陽光発電パネル4枚だけで快適に過ごせるということが分かり、再生可能エネルギーって結構いいなと体感してもらえたと思います。

――移動式えねこやの製作費はクラウドファンディングで集めたそうですね。

湯浅 実はこれ、シャーシを含め材料費がそれなりに高くて350万円ぐらい掛かっています。もちろんその費用を賄う目的もありましたが、それよりも関わってくれる人を増やしたかったので、広報も兼ねてクラウドファンディングにトライしてみたんです。

返礼品は製作ワークショップへの参加券や移動式えねこやを1日使える券など、参加型にしました。「トレーラーハウスを作ろう」と呼びかけたことで、今流行っているタイニーハウス(小さな家)好きの人とか、DIYが好きで小屋を作ろうと思っている人など、環境問題に関心がある層以外にも幅が広がりました。

新聞やテレビに取り上げられたおかげもあって、131人の支援者から126万2000円ものご支援をいただくことができました。その他、調布市内の生協系の古紙回収グループからも100万円の出資をいただき、合計220万円ぐらいは賄えた。あとは僕らが事業をしていきながら回収していこうと思っています。

――ワークショップで製作したのですか。

湯浅 そうです。施工が簡単な2×4(ツーバイフォー)で設計して、電気工事と屋根の板金工事だけは工事業者を頼みましたが、あとは全部自分たちでやりました。メンバーは主にクラウドファンディングの参加者です。4回のワークショップに延べ約200人が参加してくれました。さすがに大変で、僕は3キロやせましたけどね(笑)。

施工場所として深大寺さんの境内を貸していただきました。ちょうど花見の季節だったので、みんなが「なに、なに」と見に来るので、広報効果はあったと思います。

移動式えねこやの製作は、クラウドファンディングの出資者が協力して手づくりした(写真:水野 眞奈実)

――完成した移動式えねこやではどんな活動をしていますか。

湯浅 今、気候変動の影響が待ったなしの状況になっています。そこで、子どもや若い人たちに、CO2排出と地球温暖化などの観点でエネルギーに興味を持ってもらえるようなワークショップを少しずつ始めたところです。講義では面白くないので、「地球を救う作戦会議」と名づけてみんなが手を動かしながら考えられるようなコンテンツにしています。

11月2日から4日には南池袋公園(東京都豊島区)で、東京ビエンナーレの計画展として開催される「タイニーハウスフェスティバル」にも出展します。他に、三鷹駅前で開催される「三鷹エコマルシェ」や武蔵小金井駅前のイベント、多摩川自然情報館での子ども向けのイベントなどに出ていく予定です。

移動式えねこやは、車で牽引して移動させる。内部の広さはおよそ5畳。屋根にはパネル4枚・1kWの太陽光発電を搭載。蓄電システム、エアコン、ペレットストーブ、ミニキッチンを備えている(写真:いとう 啓子)
イベントでは、移動式えねこやの中で、楽しみながら環境問題について学べるコンテンツを開発中(写真:えねこや)

お金をかけず、楽しみながら進めるのがいい

――今後の活動の方向性を教えてください。

湯浅 今は移動式えねこやばかりが注目されていますが、根本的には「エネルギーの小屋」という本来の目的に合った恒久的な建築物をいくつも建てていきたいと思っています。

――住宅として、ということですか。

湯浅 住宅じゃなくてもいいんです。むしろ、みんなが集まれる場所の方がよりよくて、本当は空き家を改修して、例えばオフグリッドのカフェにするといった事例が増えるといいと思っています。移動式えねこやを広報に活用しながら、そうした恒久建築のえねこやを増やしていきたいと考えています。

衣食住すべてに「完全な自給自足」を掲げたりすると、ちょっと受け入れにくくなってしまう。それを望む人はごくわずかだろうし、そういう人たちは田舎へすでに移住しているでしょう。僕はそうではなくて、街なかでやりたいと思ったんです。都市部で太陽光を使って、どこまでできるか。お金をかけず、楽しみながら、エネルギーも自分事でやってみよう――。そういうノリでいいと思っています。

えねこやの蓄電池の概要

■蓄電池の容量
システム全体で48V・約18kWh。フォークリフト用の鉛バッテリーを使用している。鉛バッテリーは使い切るといわゆる「バッテリーが上がった」状態になり、使えなくなってしまうので、えねこやでは50%程度をキープするように設定。実際に使っているのは9kWhだ。バッテリーは1台2V のものを24台連結している。液が蒸発したらフタを取って水を入れるなどの手間はかかるが、湯浅さんによると10年ぐらいは持つと言われている。

フォークリフト用の鉛バッテリーを24台連結して使っている。右側の壁の黒い装置が充電コントローラー(写真:大槻 茂)

■蓄電システムの価格
鉛バッテリーが全部で約50万円。それ以外にインバーターとコントローラーが必要になる。同じ容量のリチウムイオン電池だと、150万から200万円ぐらいかかるが、今はバッテリーが過渡期で、少しずつ価格が安くなってきているので、どこかでリチウムに変えようと考えている。市販の住宅用蓄電池は価格が高いことと、オフグリッド用ではないので送電系統とつながなくてはいけないことから使用していないという。

■ペレットストーブの概要
ペレットストーブは、ペレットを供給する機構と、ファンを回す機構に電力を使うのが一般的。東日本大震災のときに停電で使えないケースもあった。そこで、環境によいという理由で熱心にペレットストーブの普及を進めてきた湯浅氏の知人が「電力がなくても使えるペレットストーブを作ろう」と改良を重ね、「船長のStove」というブランド名でオリジナルのペレットストーブを作ったという。えねこやではこのペレットストーブを採用。本体の後ろの上部にペレットを入れると重力で落ちてきて、燃え尽きて灰になるとずれ落ち、勝手に燃え続ける仕組みになっている。熱をファンで対流させるのではなく、ストーブ表面からの放射熱で暖めるものだ。