海外ニュースでも注目、海洋プラスチック問題が追い風

もともとゴミの減量をめざして開発されたe-trayだが、最近は海洋プラスチックの問題がクローズアップされていることもあり、使い捨てのプラスチック容器に代わる環境に優しいアイテムとしても期待を集めるようになっている。

「近年は微生物で分解される生分解プラスチックも増えていますが、こちらは完全に分解されるまでに10年単位の時間がかかります。現在、年間800万トンのプラスチックが新たに海洋に流入しているわけですから、たとえすべてのプラスチック容器が生分解タイプに入れ替わっても、海のプラスチックは当面の間、増え続けるわけです。一方、馬鈴薯澱粉という食べ物に由来する原料で作られるe-trayは、1週間もたてばすべてが土に還ってしまう。捨てる行為はもちろん良くないですが、少なくとも環境負荷は少なくなります」と榊原さんは言う。

海外からの注目も高まり、先日はCNNニュースでも取り上げられたe-trayだが、今後、さらに広く普及するにはひとつの大きな課題がある。それは価格の問題だ。e-trayの値段は同じようなプラスチック製容器に比べると10倍前後になってしまう。しかし、榊原さんはこの点についてはあまり気にしていないという。

「今後、可食容器が世界中に普及していったとしても、使い捨て容器全体に占めるシェアはせいぜい5%程度でしょう。しかも、それを使うのは環境意識の高い人たちが中心ですから、コストの問題はさほど重要ではないと思います。むしろ、最近は紙製のストローや器が増えていて、これらはプラスチック製品よりかなり値段が高いため、e-trayとの価格差は縮まってきているのが実態です」と榊原さんは話す。

可食容器を日本発の文化として世界へ

東京オリンピック・パラリンピックを間近に控え、e-trayの使い道として榊原さんが大いに期待を寄せているのがスポーツ観戦時の利用だという。

「スタジアムのシートは小さく、隣席との余裕がほとんどありません。そんな場所で飲んだり、食べたりしたとき、空の容器をいちいち捨てに行くのは面倒ですし、シートの下に置いても邪魔になってしまいます。そんなときに、跡形もなく食べてしまえるe-trayほど便利な器はないと思うんです」と榊原さんは言う。

2017年7月、丸繁製菓ではe-trayに続いて「食べられるお箸」という新製品も発表した。これは食物繊維が豊富なイグサを練り込んで作った箸で、使い終わったあとは一口サイズにポキポキと折って、イグサの風味と食感を楽しみながらスナックのように食べることができる。こちらもe-trayと合わせてさまざまなシチュエーションでの需要を見込んでいる。

2枚のe-trayで包んだランチボックスと食べられる箸。器も箸も食べられる、エコな仕様のランチボックスである(写真提供:丸繁製菓)

「今後の大きな目標としては、ゴミが減らせて、環境にも優しい可食容器を、私たちは日本のひとつの文化として世界にアピールしていきたいと思っているんです。というのも、京都には古くから茶寿器(ちゃじゅのうつわ)というお菓子があります。それは茶碗そっくりに作った干菓子なのですが、2~3回お茶を飲むのに使ったあとは、割って食べてしまうそうです。ある意味、食べられる器が生まれてきた背景には、こんな日本独自の文化もあるのです」

このe-trayだが、あえて特許を取得せず、実用新案登録にとどめているという。可食食器の未来を考えてのことだという。

「もっと多くの企業に可食食器に参入していただきたい。そうすれば、より多くの人たちに可食容器を使ってもらえるからです。利用者が世界中に広がっていけば、われわれが想像も付かないような斬新な使い方や食べ方がきっと生まれてくるでしょう」