こうしたオープン化の動きが加速する一方で、AI活用に関するプライバシーの課題が見直されている。欧州連合(EU)は2020年になって、「基本的権利を侵害する」可能性が認められるAIを規制する白書を発行した。そこには、欧州のAIの訓練には欧州のデータのみを使うことが求められているが、白書発行後に新型コロナウイルス感染症がパンデミックを起こしたことによって、この規制の動きが再考を迫られているという。

日本を除くアジア圏のいくつかの国で医療崩壊を起こすほどの感染拡大が防げているのは、積極的に監視措置を利用して感染した個人を追跡および隔離していることが功を奏している可能性があるという見方がある。一方で、欧米流のプライバシー保護に関する規制が行き渡っている国では、このような対策がとれなかったことが感染拡大に繋がったというのだ。

EUが発行した白書に従ってAIが規制された場合、現在急ピッチで進められているワクチンやアルゴリズムの研究開発にも影響を与える恐れがある。このため、EUは世界中の規制機関の指標になると期待されていた、AIに関する法制化のスケジュールを延期しているようだ(2020年4月11日現在)。

子どもたちのお守りで活躍するソーシャルメディア

世界中で外出禁止措置が広がっていく中、家庭における課題の1つが、学校に行けない子どもたちのストレスをどう発散させるかだ。友だちと遊べなくなった子どもたちは、昼間でも親に遊んでもらうしかないが、自宅で仕事や家事をする親たちは一日中かまってあげることもできない。そこで、アメリカを中心として退屈な子どもの相手をしてくれるソーシャルメディアの活用が広がっている。

LINEを除く主要なソーシャルメディアには、もともと年齢制限がある。フェイスブックも13歳以上からしか利用できないが、フェイスブックが開発した子ども向けアプリの「Messenger Kids」ならば12歳以下でも利用できる(写真3)。Messenger Kidsは、両親のメッセンジャー・アカウントを使って子どもたち同士が交流できる。子どもが交流する相手は親が承認する必要があるので、不特定多数の子どもたちが繋がることもない。

アメリカでは個人情報流出などさまざまな事件によって、フェイスブックに批判的な意見を持つ人も多い。そういった保護者も、子どもたちがZoomなどのオンラインミーティング・システムを使って友だちと遊ぶのは難しいし、ソーシャルメディアのアカウントを持たせるには早すぎると考えている。

そこで、自分たちが自宅で仕事や家事をしている間は、子どもにMessenger Kidsで友だちとビデオで通話したりチャットしたりすることを認めている。アメリカでは、Messenger Kidsは子どもたちがソーシャルメディアといったITテクノロジーを本格的に活用する前の、「補助輪を備えたテクノロジー」と呼ばれているようだ。

(写真3)Messenger Kidsには子どもたち同士で楽しめるさまざまな機能がある(Messenger Kidsのトライアル動画より抜粋)