いろいろな形の資本主義があっていい

──新井さんはもともとお金の専門家ですが、そもそもなぜお金を再定義しようと考えたのでしょうか。

新井:まず、今の法定通貨では社会に生じている様々な不均衡を解決できないと思ったからです。デフレに慣れてしまった日本社会には、安いことが良いことだという考えが根付いています。ですから規模の原理で効率化することで消費者が安く商品を手に入れられることが良しとされ、電子マネーやネット販売ではディスカウント率ばかりがもてはやされます。しかし、極端な値下げは誰かに無理をさせているということ。多くの場合、それは生産者です。

また、ブロックチェーン技術を使った仮想通貨が次々と出てきましたが、私には短期的に売買をして法定通貨の資産を増やすことしか考えられていないように思えました。新しい技術というのは社会が豊かになるために使われるべきで、金儲けの手段にどどまっていては新しい社会は生まれません。

透明性が確保されていて、貯蔵ができず、人間の心の成長を促し、社会的金融の機能を果たしていること。私はこれを、お金を再定義する際の必須条件と考えています。法定通貨はある意味で自由で便利すぎるんです。流動性が高いので、効率的なところに落ちやすい。つまり先程申し上げたように都市に集中しやすいんです。地域にお金を落とすことが難しいのはこれが理由です。

私はeumoという会社を立ち上げる前に25年ほど金融業界にいました。まさに資本主義のど真ん中でお金の運用をしていたわけですが、だんだんと自分がやっていることが社会的な格差を広げる行為だという気持ちが芽生えるようになりました。お金というのは、極論を言うと持っている人しか増やすことができない。それがお金の再定義をしようと考えた理由です。

「共感資本社会」は、日本中のすべての人に参加してもらうことを目的にしているわけではありません。価値観に共感してくれる一握りの人がここに関わることで社会のために活動し、豊かになるための構図が描ければいい。数十万人でいいんです。いろいろな人がそれぞれ新しい形の資本主義を掲げるのが良いと思っています。

例えばベンチャーキャピタリストとして著名な原丈人さんは「公益資本主義」というのをおっしゃっていますし、面白法人カヤックのCEOである柳澤大輔さんは「鎌倉資本主義」を掲げている。それぞれが違っていいんです。統一されてしまうことで、単一のメジャーになってしまっては本末転倒ですから。自分が心地いいコミュニティや会社の中に属していればそれでいい。地域や社会が豊かにならなければならないという思いが込められているのだから、個性的な方がいいと思います。