アメリカのSpaceXが民間企業として初の有人ロケットの打ち上げに成功、世界中で大きな話題になりました。そんな一躍注目を集めるロケット業界には、田村淳さんが魅了されている人物がいます。幼い頃からの夢をかなえてロケット開発、宇宙関連事業に取り組んでいる植松電機(北海道赤平市)の植松努社長です。田村さんは初めて植松さんと会ったとき「人生が変わった」というほど感銘を受けたといいます。今回、そんな両者の対談が実現。ロケット業界の未来について、語り合っていただきました。

田村 ご無沙汰しています。先日、たまたま飛行機でお会いして以来ですね。あのときは植松さんをお見かけして、機内にも関わらず嬉しくて思わず声をかけてしまいました。

植松 僕もお会いできて嬉しかったです。

田村 初めて植松さんにお会いしたのはもう8年ぐらい前ですよね。その頃は自分のやりたいことが思うようにうまくできなくて、個人的に苦しい時期だったんですけど、植松さんの「夢はいくつあってもいいし、どんな夢も諦めなくていい」という言葉を聞いて、本当に人生がパッと開けるような思いをしたんです。それ以来、「もうやりたいことをやるだけやろう」と生き方をシフトして、それで、いろいろと楽に動けるようになりました。

植松 そんなことを仰ってもらえて逆にありがたいです。

田村 植松さんのことは恩人だと思っていますよ。今回もぜひ直接お会いしてお話をおうかがいしたかったんですけど、こういうご時世ですからミーティングアプリ「Zoom」を使ってリモートでの対談ということでお願いします。(※編集部注 対談は5月30日に収録)

植松 僕もぜひ東京に行って淳さんに直接お会いしたかったですが、今回は画面越しでよろしくお願いします。

人生は想像もつかないぐらい、奇跡の可能性に満ちている

田村 植松さんが社長としてお仕事をされている植松電機は、北海道の赤平市にありますね。そちらは新型コロナウイルス感染拡大の影響はどのような感じですか。

植松 北海道はとにかく広いですからね。実際に感染が拡大しているのは全体から見れば一部なんですよ。それでも、もちろん影響は大きくて、例えばこの時期はいつも修学旅行生たちが大勢来ているんですが、それが全部キャンセルになっている状態です。ウイルスの影響で修学旅行に来られなかった子たちはかわいそうですね。

田村 え、植松電機って、修学旅行のコースに入ってるんですか?

植松 植松電機には毎年1万5000人ぐらいの修学旅行生が来社しています。毎回、私が案内しているんですよ。

田村 実際にロケットを作っているところを見学したりするんですか。

植松 弊社に来た修学旅行生は、まず僕の講演を強制的に聞かされるんです(笑)。それから、ひとり1台ずつロケットを作って、目の前でロケットエンジンを本当に燃やして、実際に打ち上げるところまでやることになっています。ロケットエンジンといっても小さいものですから、みんな結構、舐めてかかるのですが、吹き上がる炎はマッハ8に達するので、打ち上げの瞬間はみんな飛び上がって驚きますね(笑)。

田村 うわー、そんな機会めったにないですから、修学旅行の思い出として、かなり深く刻まれますよね。何より中学生とか高校生っていう若い時期に、植松さんの言葉に触れられるっていうことがとても羨ましいです。植松さんは、周りから浴びせられた「どうせ無理」という言葉を跳ね返して、小さい頃からの夢だった“ロケットを作る”ことを実現しました。その成功体験談って、絶対に修学旅行生たちに響きまくると思います。

(写真提供:植松電機)

植松 ありがとうございます。修学旅行生たちからもたくさん感想文が届きます。みんな自分の夢について書いてくれるのですが、「いつかロケットを作りたい」とか「将来は宇宙飛行士になりたい」という子はまずいません。一番多いのは「自分の夢を諦めません」という感想なんですよ。「絶対に無理だと思っていた夢を諦めなくていいと気づきました」って書いてくれるのです。実際、数年後に「夢が叶いました。今でも修学旅行で作ったロケットをとってあります」と書かれた手紙が届くことがあります。本当に嬉しくて泣けてきますね。

田村 いい話だなぁ。修学旅行生たちが作っているロケットは、物理的に空に飛ばすだけじゃなく、自分の夢を託して飛ばすものなんですね。

植松 修学旅行生たちが自分たちで作るロケットは、今から60数年前に東京大学の博士たちがとても苦労して研究、開発したロケットとほとんど変わらないものです。科学技術がいかに発展したのかが、よくわかりますよね。修学旅行生たちにはそれを伝えて、「だからこそみんなも10年前、20年前の“常識”みたいなものに決して負けないでほしい」という話を必ずしているんです。それでみんなが前を向いて本当に頑張ってくれたら、これまでにない新しいものが生まれるはず。奇跡はきっと起こるはずなんですよ。

田村 今、話を聞いているだけで、僕が感動で泣きそうになっていますけど(笑)。

植松 こうして北海道にいる私と東京にいる淳さんがオンラインで対談できるのも、リモートで話ができるツールを頑張って開発した人がいるからですよね。いろんな人たちがいろんな分野で頑張ってくれたおかげで、いま僕たちはいろんなことができるようになりました。今の中学生、高校生たちはあと10年もすれば、もっとすごいこと、新しいことをきっと実現してくれるはずです。その可能性を、僕たちのような上の世代がつぶすような真似を絶対にしたらダメだと思うんです。むしろ率先して、自分の好き放題にやりたいことをやってみせないといけないのかな、と。

田村 大人でそういう話を本気でしてくれる人ってあまりいないから、植松さんのお話を聞いてそれまでの価値観ががらりと変わったり、救われたって気持ちになったりする子はたくさんいるでしょうね。僕自身、初めてお会いしたときに植松さんの言葉に触れてそういう思いをしましたし。

そのときにいろいろ貴重なお話を聞かせてもらいましたが、すごく印象に残っている言葉があります。

「どんな小さなことでも、大きなことでも夢になる。やりたいと思うことがあったら、まずはそれを口に出してどんどん人に伝えたほうがいい」

この言葉を聞いて以来、僕は「これをやってみたい!」という衝動が生まれたら「実際にできるのか、できないのか」とか一切考えず、全部口に出していろんな人に言うようにしているんですよ。そして、そのときは「なんで自分がこんな話をするかというと……」と、必ず植松さんの言葉も伝えるようにしています。そうすると“植松努”という人物そのものにも興味を持ってくれるんですね。それで、その人が自分で植松さんのことを調べて、植松さんの言葉に影響を受けて、その人自身の言動がまた変わっていくという、そんな不思議な連鎖現象みたいなことが僕の周りで起きています。

植松 夢というものは本当にいくつあってもいいものだし、それをどんどん人に伝えていくことは、自分のやりたいことを実現するチャンスを広げることにもなるんですよね。お酒を飲みに行った先で自分の夢を喋ったら、そこで知り合った人と一緒にやることになったり、そういうことって実際にあるものです。ですから修学旅行で訪れてきた子たちにも話します。

「みんながそれぞれに人と関わり、つながっていったところで、いろんな奇跡が起こるはずで、その奇跡はあなたがいなかったら起こらなかったかもしれない。だから、みんなの人生は自分では想像もつかないぐらい、いろんな奇跡の可能性に満ちているんだよ」と。