「デジタルコンテンツの資産化」を可能にする──。大手電子書店などの電子書籍サービスへのプラットフォーム提供や取次事業で知られるメディアドゥが、ブロックチェーンを使った新たなプラットフォーム事業を2021年2月期の第三四半期(2020年の9~11月)に開始する。冒頭に触れた、「デジタルコンテンツの資産化」を可能にするプラットフォームとはどういったものなのか。同社の溝口敦取締役CBDO(Chief Business Development Officer)の構想を聞きながら、近未来におけるデジタルコンテンツの新しい消費体験を垣間見る。

──メディアドゥの事業内容を教えてください。

溝口氏(以下、敬称略):ブロックチェーン事業とそれに関連する部分について、これまでの流れからお話しします。元々、私たちは音楽配信や「着うた」を手がけておりまして、この事業を通じてデジタルコンテンツの著作物の取り扱い方や印税の支払いなど、著作物流通に関する様々な技術と知見を得ました。

実際にデジタルの著作物流通を自分たちで手掛けてみると、かなり手間がかかるし、一朝一夕で実現できるものではないことが分かりました。そこで、音楽配信で得たものを他の領域にも横展開できないかと考え、その中で候補に挙がったのが電子書籍でした。電子書籍は市場の成長も期待できたし、ノウハウも生かせそうだったので、「ここに音楽ビジネスで培ったものをぶつけよう」ということになり、2006年に事業を開始しました。

事業開始当初から現在に至るまで、電子書籍ビジネスを展開する事業者様向けのプラットフォーム提供と電子書籍の取次、自社書店の運営などを手がけています。プラットフォームには様々な提供形態がありまして、書店を立ち上げるために必要なシステム全てを提供しているケースもあれば、出版社様とのコンテンツの取次だけ行っている場合もあります。

自社書店の運営も手がけているのは、プラットフォームを提供している取引先企業様のニーズを、自分たちも同じビジネスを展開することで学んでいきたい、と考えているからです。ですので、私たちの電子書籍ビジネスの軸足は、システムや取次などのプラットフォーム提供の方にあります。

溝口敦氏。2000年エヌ・ティ・ティ・ドコモ(現・NTTドコモ)入社。iモードベースの「着うた」立ち上げなどのコンテンツ事業に携わる。2008年にメディアドゥ入社。2010年に執行役員営業本部長、2016年に取締役事業開発本部長、2017年に取締役グループCOOなどを歴任。2019年よりグループ会社 MyAnimeList, LLC.代表取締役に就任。2020年6月より、新規事業およびアライアンスの統括としてメディアドゥ取締役 CBDOに就任。電子書籍流通事業や電子図書館事業、新規事業などに従事した幅広い経験、モバイル通信やITに関する知見を活かし、取り扱いコンテンツの領域拡大や、国内外の新規市場開拓を担う。

「より簡単に、かつ永続的に可能にすること」がブロックチェーンの本質

──ブロックチェーンを使った新事業について教えていただきたいのですが、その前にまずブロックチェーンを使う理由や、新たに可能になることを教えていただけますか。「デジタルコンテンツのコピーを防ぐことで二次流通が可能になる」ということと理解しているのですが、正しいでしょうか。

溝口:コピーが防げるうえ、デジタルコンテンツの「資産化」が永続的に担保できるようになります。これによって、結果として二次流通も貸し借りも可能になる、ということです。

(筆者注:ここで言うデジタルコンテンツの資産化とは、ユーザーが保有する個々のデジタルコンテンツが暗号資産(仮想通貨)と同じように、インターネット上で資産として確実に証明できるようにすることを指す)

デジタルコンテンツのコピーをできないようにする、ということだけであれば、別の技術でも可能なのです。コピーの禁止にもいろいろあって、画像のコピーは禁止できても、端末でのスクリーンショットは防げないということもあります。スクリーンショットまで禁止できる技術もあるのですが、それを使ったとしても、スマホの画面自体を別のスマホで撮影することまでは防げません。

そうなると次に何が必要になるかというと、その画像がオリジナルかどうかを判別することです。ブロックチェーンを使えば、コピーの禁止に加え、オリジナルの判別も可能になります。ただこのオリジナルの判別についても、他の技術でも実現できます。

では、ブロックチェーンの何が優れているかというと、今まで説明したような内容が比較的容易に実現できる、現実的な投資額で実現可能になる、ということです。

──そういった特徴が仮想通貨のような暗号資産に向いていたので、盛んに使われているのですね。

溝口:そうですね。比較的容易に実現できて、改ざんがしにくく、誰が持っているかを特定しやすい、といった特徴は確かに暗号資産の実現に向いています。ただ繰り返しになってしまいますが、ブロックチェーンでなくても同様のことが実現できるケースは多いんです。

例えば、「何々ポイント」のようなポイントプログラムは、暗号資産に似てはいますが、ブロックチェーンは使っていませんよね。それでも、誰がいくらもっているか分かるし、個人が不正に複製して額を増やすことも難しいので、取引に使うことができています。

しかし、そういった技術には欠点があって、仮にポイントを配布している事業者が倒産してしまったような場合に、永続性、継続性を担保するのが難しいんです。そういった事態にも対応するためには、もっとオープンでパブリックな思想を持つ技術を使う必要があって、それを実現しやすいのがブロックチェーンなんです。オープンである、というブロックチェーンの特徴は、インターネットのそもそもの考え方と近いと思います。