恋愛・結婚は幸福度を高め、仕事の生産性も上げる

──恋愛のマッチングアプリの開発に至る前段として、働き手のウェルビーイング(心身の総合的な幸福度)をどう向上させるべきか、また、本来社員のために企画されたはずの施策が裏目に出ていることへの問題意識があった、ということですね。

豊嶋:男女の良好なパートナーシップが人生の幸福度を高めることは、多くの方が同意されると思います。海外では「ワークライフシナジー」の研究が進んでいます。

このワークライフシナジーにおける「ライフ」の幸福度向上は、恋愛と結婚がキードライバーとなっています。つまり、恋愛・結婚生活を充実させることが、社員の幸福度を高めることになり、さらには仕事のパフォーマンスを上げることにもつながる、というわけです。

翻って、日本では少子高齢化が社会課題として顕在化しています。企業が自社員の良好なパートナーシップを支援することは、企業にとっても、そこで働く社員にとっても、また日本にとっても、理にかなっていると考えます。

──なるほど。話を戻しますと、もし仕事が生活の中心であったとしても、「社内恋愛」という言葉が示すように、恋愛や結婚もできるはずですよね。この点について、以前勤めていた会社はどんな状況だったのでしょうか。

豊嶋:当時勤めていた会社においては、「異性の社員であっても同じ土俵で戦う競争相手」という認識が強くありました。つまりお互い恋愛対象にはならない、ということです。そのため、昔は普通にあったという社内恋愛も減っていました。

「うちの会社以外の状況はどうなっているのだろうか」と疑問に思い、調査を始めました。社外の80人程にヒアリングしてみたところ、他社でも状況は同じであることが分かったのです。

調査に応じてくれた女性のうち9割くらいは「気がついたらキャリアに乗せられていた」と言っており、焦っている様子でした。会社側の意向を汲んで頑張った結果、生活のバランスを崩してしまい、将来像を描けず、相当なストレスや不安感を持っていたようでした。

男性からは「職場の女性はライバルだから恋愛対象にならない」という話を多く聞きました。女性活躍を推進する企業では、「同じ評価を得た場合、女性の方が評価される」というケースが多く聞こえてきており、それが女性社員への不信感を生む一つの要因となっているようでした。

──まさに、企業におけるダイバーシティ施策の負の側面が健在化した、と言えそうですね。

豊嶋:ダイバーシティの考え方そのものは素晴らしいと思うのですが、企業側が施策を実施した結果生まれた社内の現状を見ず、何も手を打たなかったらこういう事態になる、ということでしょうね。

調査を進めた結果、男女限らず独身の管理職はプライベートを充実させることが難しいため、仕事にのみ誇りを持つようになりがちであることも見えてきました。その上、成果主義の浸透から、以前より失敗を恐れる人が増えています。男性は特に、この傾向が強いです。

さらに調べたところ、気になる相手に会って話をするような場において、女性はこうした傾向を持つ男性を余計に傷つけるような言動をしてしまいがちである、ということも分かりました。

──女性が男性を傷つけてしまう、その構造はどのようなものなのでしょうか。

豊嶋:例えば、男性と女性が出会いの場で初めて会ったとき、8割くらいの男性は女性との会話の盛り上がり方で手応えを確認したり、また自分に対して良い反応を示してくれた相手にさらなる興味を持ったりします。

一方で女性は会話中に何を重点的にチェックしているのかというと、恋人あるいは結婚相手としての安定感や将来性です。それらの確認を急ぐあまり、会話を自分が欲しい情報に誘導しがちになります。そうすると「会話が盛り上がらなかった」と感じさせたり、プライドを傷付けたりしてしまいます。

こうしたすれ違いは当人同士で解決することは難しいです。けれども、他者が間に入って、男女のすれ違いが起きる構造を客観的に見て適切にアドバイスできれば解決できる可能性があります。

様々な調査を進めた結果、男女が出会って恋愛や結婚に至るには、ただ出会いの機会を設けるだけではだめで、間に立って最初の出会いから恋愛関係に発展するまでのコミュニケーションを総合的に支援する仕組みが必要だということが分かりました。