急須を揺らす仕草から発想したインフューザーの動き

河野辺さんがteploティーポットを開発するに当たって最も苦心したのは、茶葉を投入するインフューザーという機構だった。これはお茶のプロがゆったりと急須を揺らす仕草から思いついたもので、茶葉を淹れたインフューザーはお茶の種類などに応じて、お湯の中で回転したり、スイングしたり、どっぷりと浸ったりと、多様な動きができるようになっている。

「お茶を自動抽出する機械は数多くありますが、このような機構は従来はありませんでした。そのため開発はまったくゼロからのスタートでした」と河野辺さんは言う。

さまざまな種類のお茶を淹れてはテイスティングを繰り返すという試行錯誤の末、ようやく完成したのは半球形の金属にたくさんの小さな孔(あな)を開け、ポットの外側から磁力で駆動するという方式だった。こうして完成したのが、最もおいしいとされるお茶の最後のひとしずく「ゴールデンドロップ」をイメージさせる美しい形状である。

teploティーポットの開発にあたっては、さまざまな議論が2人の間で交わされ、徐々に形になっていった(画像提供:LOAD&ROAD)

このほか、teploティーポットの全体的なデザインは、キッチンのカウンターやテーブルの上に置くだけで絵になるようスタイリッシュな仕上がりを意識した。例えばポット部はお茶の色を目でも楽しめるよう透明のガラス製としている。

さらに河野辺さんは、teploティーポットで淹れたお茶を可能な限りおいしく飲んでもらいたいという思いから、専用のグラスも製作した。これは側面の内側と外側を偏心化したグラスで、飲み口に薄い部分と厚い分があり、お茶の種類や温度によって飲み分けられるようになっている。

お茶という飲み物を舌で味わうだけでなく、目で見たり、手や唇で感じたりしながら、心ゆくまで楽しめるよう、teploティーポットにはさまざまな仕掛けが組み込まれているのである。

最も苦心したという、茶葉を投入する内部機構のインフューザー。球形の金属にたくさんの小さな孔(あな)を開けており、ポットの外側から磁力で駆動する(写真撮影:中島有里子)

日本茶の人気が高いアメリカでの販売も予定

近年、日本の茶葉生産量は年間8万トン前後で安定する一方で、日本人のお茶の飲み方は大きく変わりつつある。その要因はペットボトルなどで販売される茶飲料の存在だ。

日本で茶飲料、いわゆるペットボトル入りのお茶が販売されるようになったのは1990年のことである。その後、持ち歩きに便利な500mlペットボトル入りの茶飲料が登場すると、その消費量は一気に拡大していった。総務省の家計調査(2人以上世帯)によると、緑茶茶葉と茶飲料の1世帯当たりの年間支出額は、2000年頃までは6:4程度の比率だったのが2007年を境に逆転し、現在では茶飲料の割合が6割を超えている。

特に若い世代ではこの傾向が顕著で、自分でお茶を淹れることはないものの、お茶を飲むこと自体はごく日常的な習慣になっているのである。将来、こういう人たちが茶葉で淹れるお茶にも関心を持つようになったとき、彼らの目にteploティーポットはとても魅力的に映るに違いない。

また、長年お茶に親しんできた人にとっても、さらにお茶の味を追求したいと思ったときには、teploティーポットは非常に便利なアイテムである。そのため、LOAD&ROADではレストランや宿泊施設とのコラボなどを通じて、お茶の魅力をあらためて実感できるような機会を多くの人に提供している。

(画像提供:LOAD&ROAD)

現在、teploティーポットは公式サイトで販売しているほか、国内のセレクトショップや百貨店、さらには米国での販売も予定している。海外での展開について、河野辺さんは次のように語っていた。

「日本市場以外で私たちが最も注目しているのは米国です。大手飲料メーカーが輸出に力を入れてきたおかげで、シリコンバレーのIT企業などではペットボトル入りのお茶を飲むのはごく当たり前になっているんです。日本茶はヘルシーな飲み物として非常に評価が高い。米国の人たちがコーヒーや紅茶のように、茶葉から淹れた日本茶を飲むようになる姿は今後大いに期待できそうです」

遠い昔、中国大陸から日本へと伝えられたというお茶は、時代の移り変わりとともにさまざまな形で日本人の間に広まってきた。このデジタル技術隆盛の時代に登場したteploティーポットもまた、長いお茶の歴史における変化のひとつであり、そこにはお茶の楽しみ方そのものを大きく変える可能性が秘められている。

河野辺さんと「紅茶やハーブティーもとても美味しく淹れられますよ」と語るLOAD&ROAD広報担当の加藤明里さん(左)(写真撮影:中島有里子)