マイクロチップ、レンズのインプラントがヘルスケアの形を変える──。田村淳さんと「WEIN挑戦者FUND」代表の溝口勇児さんが、テクノロジーがもたらすデータ収集の低コスト化、健康情報のリアルタイム把握がもたらす未来のヘルスケアについて語り合いました。後編となる今回も、メンタルヘルスケアの変革、社会全体のウェルビーイングの実現、そのために必要なスタートアップ支援の意味など、さまざまな論点が出てきました。

溝口 前回、イノベーションが起こるときのパターンについて少し話しましたけど、もうひとつイノベーションにつながる大きな要素があって、それは「今まで見えなかったことが見えるようになる」ことなんです。たとえば、昔は気温って見えなかったですよね。

田村 そういえばそうだね。

溝口 でも温度計が作られたことによって、それが"見える化"して、今では誰もがエアコンのリモコンを使って当たり前に温度調整をしています。これは水温でも気圧でも湿度でも何でも同じなのですが、見えなかったものを"見える化"することで、その周辺に新しい製品が作られて、産業が生まれていくんです。ヘルスケアについても血圧や尿酸値、中性脂肪、HbA1cといったものが健康診断で普通に分かるようになってきたわけですが、今後はこの健康状態を示す数値の"見える化"のコストがIoTの発展、普及によって劇的に下がっていきます。前回もお話したマイクロチップのインプラントで血中データが常にリアルタイムで見えるようになる、といった具合に。それで心臓病や脳梗塞といった病気の発症が事前に感知できるようになっていくと思うし、またそれによって新しいビジネスが始まっていくはずなんですよね。

田村 ストレスなんかも目に見えないけど、唾液を測定すればどのくらいストレスを感じているかチェックできるんだよね。そういうものをレンズ型ディスプレイと併せて使えば、仕事をしながら「今どのくらいストレスを感じているか」とか、自分のストレス値がリアルタイムで視界に表示されるようになる。すごく過ごしやすくなりそうだし、メンタルヘルスケアの分野も大きく変わっていきそうだよね。

"声"でメンタルの状態をリアルタイム分析

溝口 メンタルヘルスケアの分野については、声を分析するテクノロジーにも注目しています。声は喉の振動によって発せられていますが、それ以外にもさまざまな体の器官の動きが関連しているんですよ。実はこの声の状態からその人のメンタル状態がわかるようになってきているんです。つまり、日常的に僕たちが発している声をモニタリングする仕組みができれば、本人でもわかりづらい自分の心の状態を常時把握できるようになる。これはメンタルヘルスケアにイノベーションを起こすテクノロジーだと思います。さらに、声の分析で新型コロナウイルスの感染もわかる可能性もあると言われているんですよ。

田村 え! そんなことまでわかるの?