人生の後半戦も存分に楽しむことを当たり前にする──。このようなビジョンを掲げた業種・業態横断型のプロジェクトがスタートしている。そのプロジェクトの名称は「白秋共同研究所」。同研究所では、50歳から75歳未満を「白秋世代」と定義している。研究所のオーナーは神戸を本拠に置く大手ダイレクトマーケティング企業のフェリシモ、所長は予防医学研究者として知られる石川善樹氏が務める。同研究所はマーケティング上いわば“空白地”だったこの世代を深掘りし、新たな市場の創造を狙う。

ここ日本では平均寿命と健康寿命の延伸により、以前からある「シニア」や「高齢者」の概念が当てはまらなくなってきている。白秋共同研究所は、「人生100年時代」を見据え、「白秋世代」に当たる50歳から75歳未満の人々に着目、この世代の人々が望む商品やサービスを開発し、新市場を開拓。ひいては50歳代以上の人々がより人生を楽しめる社会の創造を狙う。

プロジェクトの初年度は昨年(2020年)10月に本格スタートした。エイチ・ツー・オーリテイリングや大日本印刷などの大手企業、あるいは公共団体やベンチャー企業など、参加企業の35社の顔ぶれは多様。約70人の社員(研究員と呼ぶ)は、まず100人の白秋世代の人々に接触しながら、市場の定義に取り組む。次年度(2021年度)には参加企業を50社に増やし、10万人市場をターゲットに商品やサービスを投入することを目標とする。

2020年10月に開催された、白秋共同研究所第1回の研究会のワンシーン。石川善樹氏(写真中央)によるレクチャーの様子(写真提供:白秋共同研究所)
2020年10月に開催された、白秋共同研究所第1回の研究会のワンシーン。石川善樹氏(写真中央)によるレクチャーの様子(写真提供:白秋共同研究所)

白秋共同研究所の仕掛け人の1人、コンサルティング会社W Inc.の代表取締役社長である廣岡大亮氏に話を聞く機会を得た。白秋共同研究所の事務局として、企画・運営、および参画企業のバックアップとサポートを担う。廣岡氏はこれまで経営コンサルティング会社で新規事業開発やM&A支援などに従事、2019年に独立してW Inc.を設立した。企業の事業開発支援をする中、白秋共同研究所のコーディネートにも携わることになった。

廣岡氏に、白秋共同研究所の狙いや設立の背景、今後の活動目標を語ってもらった。

健康寿命の延伸で生じた新たな課題

──まずは「白秋」という言葉について教えていただけますか。

廣岡氏(以下敬称略):中国では、人生を「青春」、「朱夏」、「白秋」、「玄冬」という4つの期間に区切るという考え方があるそうです。それぞれの考え方や区間の区切り方に諸説あるようなのですが、我々は人生を25年ずつで区切り、50歳から75歳未満を「白秋世代」と定義しました。

近年、「人生100年時代」と言われるようになりました。実際、平均寿命も健康寿命も延び、いわゆる現役世代の人生がより長くなっています。また、働き方改革や定年延長により、個人が選択しうる時間が増えています。すると大きな課題になってくるのが、健康で自由な時間とお金を手に入れた人生をどのように過ごすのが良いか、ということです。

例えば男性については、仕事をしっかり頑張って定年まで勤め上げたものの、引退したらどうしたらいいのか分からなくなる、という声が聞かれています。そうではなく、この白秋世代に当たる時期をより楽しめるようにすることが必要だと考えます。白秋共同研究所の所長を務めておられる石川善樹さんはそんな現状を踏まえて、「白秋世代に対する世間の認知の置き換えが必要だ」と提唱されています。

廣岡大亮(ひろおか・だいすけ)氏
廣岡大亮(ひろおか・だいすけ)氏
W Inc. 代表取締役。戦略・新規事業開発コンサルタント。神戸出身。神戸大学法学部卒。新卒1期生として経営コンサルティング会社のシグマクシスに参画。経営戦略策定、新規事業開発、M&Aを中心に案件をリード。約1年半の育児休暇を活用し、街づくりやスモールビジネス支援に携わった。のちに「創造性」×「ウェルビーイング」を日常に実装するコンサルティング&クリエイティブファームであるW Inc.をフェリシモの出資で設立し、現職。3児の父。神戸大学非常勤講師。