中高生が横断的につながる場にも

──コミュニティがコンパクトだと、逆に息が詰まると感じる向きがあるかもしれません。特に若い人ほどそうした捉え方をしがちですが、この点はいかがでしょうか。

羽田野:私がこのプログラムを実施したいと思った理由の1つには、とがった子どもたちが活躍できる場を用意したいということもありました。過去に、日南市の高校生がクラウドファンディングを使って、油津商店街を傘で装飾するプロジェクトを実現した例があります。面白い発想をする子どもはどこの学校にも1人はいるものですが、このような子たちが学校の枠組みを越えて集まる場があったらいいのではないかと考えました。

※筆者注:台風の影響により外されてしまった油津商店街アーケードの屋根を、カラフルな傘で彩り飾るというプロジェクト。クラウドファンディングサイトCAMPFIREで資金を集めて成立、2018年10月から11月にかけて実施した。

今の日南市では、区域によっては小学校入学から高校卒業までひとクラスでずっと同じ顔ぶれという子どもも少なくありません。そうした中で、起業体験プログラムは日々の生活区域を超えて、同年代の仲間とつながる機会を提供できます。この体験が、周囲の若者たちへの良い刺激を提供してくれるのではないかと考えています。

宮崎県でもプログラムを展開

羽田野さんが手がけている起業体験プログラムは地域でさらなる広がりを見せている。羽田野さんは先にも紹介したミテモの谷口真里佳さんとともに、この10月から来年(2022年)1月にかけて、宮崎県の主催で起業体験プログラム「みやざきビジネスチャレンジクラブ」を実施する。

ミテモの谷口さんは、これまで横須賀でのプログラム提供にも関わってきた経験を踏まえて次のように語る。「『答えのない時代』に突入していると言われる中、こうしたプログラムを通じて次の世代の人たちに『自分で仕事をつくる』という道をより身近に感じてもらいたい。これは本人はもちろん、日本の地域の将来にとっても有効だと確信している。今後この中から起業家が生まれてくるのが楽しみだ」。

宮崎県主催の起業体験プログラム「みやざきビジネスチャレンジクラブ」の募集告知(資料提供:谷口真里佳氏)
宮崎県主催の起業体験プログラム「みやざきビジネスチャレンジクラブ」の募集告知(資料提供:谷口真里佳氏)

近年注目を浴びているSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標が掲げられており、その1つに「質の高い教育をみんなに」というものがある。趣旨としては開発途上地域における格差是正だが、広くこの目標の意味を考えた場合には、ここで取り上げた日本における地方と都市部の格差も見逃せない。

にちなん起業体験プログラムの盛り上がりは、平等な教育機会をどう確保すればよいか、あらためて議論を進めるための良いきっかけになるかもしれない。