徐々に宇宙旅行の大衆化への道が見え始めてくるなど、驚異的なスピードで成長を続けている宇宙分野。日本国内からも、宇宙を対象にしたさまざまなビジネスが立ち上がろうとしているが、今回はその中でも独自の先端技術で国内外から注目されている宇宙スタートアップの取り組みを紹介したい。

ダンスしながら対象物に近づくスペースデブリ除去衛星

2021年は、複数の民間人が宇宙旅行を体験した「宇宙旅行元年」となった。アメリカでは7月にブルーオリジンのロケットが4人の民間人を乗せて約10分間の宇宙旅行を楽しみ、9月にはスペースXが4人の民間人を乗せて3日間の地球周回旅行を実現した。日本の民間人としても、12月に実業家の前澤友作氏が12日間の国際宇宙ステーション(ISS)滞在を実現させた。そうした宇宙の観光地化だけでなく、さまざまなビジネスや社会課題の解決にも結びつけようとする宇宙活用への取り組みが加速している。

そんな今だからこそ、早めに解決しておかなければならない課題がある。それが、スペースデプリ(宇宙ごみ)の回収だ。今後10年間で何万機という数の衛星の多くが、高度250kmから2000kmの低軌道に打ち上げられると試算されており、スペースデブリの数は年々増加するだろう。運用終了後の衛星除去が宇宙活動の運用原則として定着しない限り、今後さらに稼働中の衛星を巻き込む衝突の可能性が高まることは明らかだ。

スペースデブリ除去をはじめとする軌道上サービスに取り組むアストロスケールは、利用されなくなった宇宙機を捕獲するためのドッキングプレートを開発した。自動車の牽引フックのように標準化されたインタフェースを持つドッキングプレートは、打ち上げ時に衛星に装着される。その後、衛星が運用期間を終え必要なくなった際に、アストロスケールのスペースデブリ除去衛星がQRコードが目印となるドッキングプレートを使って、機体を回収する捕獲サービスを提供しようとしている(写真1)。

(写真1)アストロスケールが2021年3月に打ち上げたスペースデプリ除去技術の実証衛星「ELSA-d」の1/2サイズ模型(左)とドッキングプレートの例(右)(写真撮影:元田光一)
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(写真1)アストロスケールが2021年3月に打ち上げたスペースデプリ除去技術の実証衛星「ELSA-d」の1/2サイズ模型(左)とドッキングプレートの例(右)(写真撮影:元田光一)

スペースデブリ回収の難しさは、回転しながら秒速7~8kmで高速移動している対象物をどう捕捉するかだ。通常、衛星同士がドッキングする場合は、お互いが通信によって位置や状態を確認しながら近づいていって最終的にドッキングの位置合わせを行う。だが、スペースデブリとは通信ができないため、スペースデブリ除去衛星はまず対象物に対して遠方からGPSの情報を頼りに接近し、ある程度近づいたところでセンサーを使って捕捉する。さらに十分な距離まで近づいたところで、対象物の周りを回りながら回転速度を判定したりドッキングプレートの位置を確認する。その後、対象物の動きに合わせながら、まるでダンスするような動きで距離を縮めてドッキングプレートの位置合わせを行い捕獲する(動画1)。2021年から始めている実証実験では、スペースデブリ除去衛星は対象物を捕獲すると徐々に軌道離脱させながら大気圏に突入して焼却させるが、2024年からの運用を目指している商用化では、複数のスペースデブリを回収した後に大気圏に突入させるようになるという。

(動画1)「ELSA-d」がスペースデブリを回収するデモ動画(アストロスケールが公開しているYoutube動画)

宇宙空間でクルーと一緒に作業をするロボット

国家レベルで競ってきた宇宙開発競争では、いかにして人間を安全に宇宙に届けるかが課題だった。近年ではISSでの事例を見るように、宇宙ステーション内でさまざまな宇宙活用のための実験が行われており、それらの作業の安全や安定化、効率化を確保することも課題となりそうだ。その課題解決に、日本の宇宙スタートアップが開発したロボットが海外からも注目されている。

GITAIは日本時間の2021年10月13日から10月17日にかけて、ISSのBishopエアロック船内にて宇宙用自律ロボットによる汎用作業遂行技術実証を実施。それによって、GITAIのロボットがISS船内で、宇宙用パネルなどの組立やスイッチ・ケーブル操作などの作業を成功させた(動画2)。追加の実証実験として、共同実証を行ったヒューストンに置かれたNanoracksの管制室から、スイッチ・ケーブルの操作などISSの船内作業を遠隔操作で行うことにも成功している。これによって、NASAは次のステップとして、ISSの船外という過酷な宇宙環境でのロボットの動作実証を行うという。

(動画2)GITAIの宇宙用自律ロボットが汎用作業遂行技術実証を行う様子(GITAIが公開しているYoutube動画)

GITAIは、宇宙ロボットの活用で「宇宙でものを作るコストを100分の1に下げること」を目指して設立されたスタートアップだ。独自の汎用型宇宙ロボットを開発し、宇宙ステーション船内外の作業、軌道上のサービス(衛星への燃料補給・修理、スペースデブリ除去サービス)や月面探査・基地開発作業などのロボット化を目指している。今回の実験に使われたアーム型ロボット以外にも、1.7mと人間と同じくらいの身長で2本の腕を持ち、カメラで撮影した画像を遠隔に送ってゴーグルのようなディスプレイに表示するロボットの開発も進めている。その画像を人間が人工衛星や地上から見ながらロボットを操作することで、ロボットがクルーの一員となる。そうすれば、人間のクルーを宇宙に送り込む100分の1以下のコストで、ロボットを宇宙に送り込めるという。