自己増殖の可能性がある有機ロボットの材料

コーネル大学は、生物のような機能を持つ有機ロボットの素材を作る「DASH(DNA-based Assembly and Synthesis of Hierarchical)」というメカニズムを開発したと発表した。DASH素材で作られた有機ロボットは、移動、資源を消費してのエネルギー摂取、成長、衰弱、進化といった能力を持つようになるという。

DASH素材は、DNAを構成するヌクレオチドという物質で構成されている。この物質を元に、10億分の1メートルとなるナノサイズの生体材料(人工関節やデンタルインプラント、人工骨など、主に人間に移植することを目的とした素材)を作成すると、DNA分子が何度も増殖を繰り返すことで、最終的には数ミリメートルの大きさにまで達したという(写真3)。増殖したDNA分子に液体を注入することで、有機ロボットを完成させる。また、DASH素材はアメーバなどの粘菌のように、ある特定の刺激を受けることで移動するので、異なる刺激を認識できるようにすれば行動のプログラミングも可能になる。

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(写真3)DASHの生成イメージ(出典:Science RoboticsのWebページより)

有機ロボットを開発したコーネル大学の研究チームは、「DASH素材は生物ではないが、今までにない生きた素材」と語る。現時点ではDASH素材は2サイクルの合成と分解で寿命を終えるが、今後寿命が延長されれば、自己複製して新しい世代を残す可能性もあるという。研究者はDASH素材による有機ロボットに環境刺激を認識させ、光や食べ物を自律的に見つけ出す方法や、有害物質を回避する方法を模索しているという。

いつかロボットが宇宙から人間を迎えに来てくれる?

現時点で研究されている自己増殖が可能なロボットは、バイオ素材を利用したマイクロサイズだ。このサイズのロボットでは、単体での役割はごく限られたものになるだろう。しかし、自己増殖によって集団で作業できるようになれば、可能性はさまざまな分野に広がっていく。xenobot の研究に関わったBongard氏は、「人類は弱くて劣化しやすい生体組織の代わりに、強くて劣化しにくい鋼などの無機化合物を使ってさまざまな道具を作ってきた。それらの道具は壊れると自分では再生できないが、生体組織からなる生物は、自分自身を再生することで45億年間生き続けている」と、自己増殖可能な生体ロボットの可能性について語っている。

では、自己増殖可能なロボットは、将来どのような分野で活躍できるようになるのだろうか。例えば、人間が入っていけない危険な場所ではロボットが有効に活用できるが、その現場で壊れてしまった場合は人間が回収して修理するか、新しいロボットを送りなければならない。その点、自己増殖ロボットならば一部の個体が壊れてしまっても、その場ですぐに補える。

自己増殖ロボットを提唱したフォン・ノイマンは、こうした機能を持つロボットが人間の宇宙開発に役立つようになると考えていた。例えば、月面に基地を作るなど大規模な宇宙工事を自己増殖ロボットに任せる場合でも、まず最初に小さなロケットで個体を運べば、後はそのロボットが仲間を増やして協同作業で基地を建設する。さらに別のグループが、地球よりも重力が小さくて宇宙に飛び出しやすい月から火星にロボットを運ぶロケットを作って、打ち上げる。自己増殖ロボットは今度は火星で、人間が住める環境を持つ居住施設を作る。完成したらロケットを作って地球まで人間を迎えに来てくれる。

そこまでのことが可能になるには、まだまだ多くの時間が必要になると考えられる。だが、そもそも人類の宇宙開発のスパンは世紀単位なので、決して長過ぎる時間とはいえないだろう。