我々の日常の中でドローンが飛び交う社会が、現実に近づきつつある。自律飛行が可能な小型マルチコプター(ドローン)を活用する例が、国内で急増している。写真などに基づいた3次元(3D)測量や監視のサービス、宅配をはじめとする荷物の配送などである。従来も想定されていた利用シーンではあるが、実際にビジネスとして動き出している。

ドローンが日本で注目されるようになったのは3年ほど前。きっかけの一つは、米アマゾン・ドットコムが同社商品の配送に利用する方針を明らかにしたことだろう。そして、ドイツのDHLや、中国で配送サービスを手掛けるEMSなど、世界でいくつかの企業がドローンを使った配送で後に続こうとした。ただ、人が密集する場所でドローンを飛ばす場合の安全性、飛行距離や積載可能重量の制約などの課題があり、実用化には時間がかかっていた。

その荷物配送でのドローン活用が、国内で始まった。採用したのは楽天。2016年5月9日、千葉県夷隅郡御宿町のゴルフ場「キャメルゴルフリゾート」内で配送サービス「そら楽」を始めた。厳密には、第1弾として一定期間実施するもので、ここで利用者のニーズや運用状況を確かめ、課題を分析。そのうえでサービス拡大や他地域への展開を検討する。

利用するドローンは、自律制御システム研究所と共同開発したもの(写真1)。サービス内容は、コース上のプレーヤーが注文したゴルフボールや飲食物の配送である。専用のスマートフォン用アプリで自分が今いるホールと、購入したい商品を選ぶと、クラブハウスから15番ホールのティーグラウンドにある「受取所」まで、ドローンが商品を運んでくる。配送料はかからない。

(写真1)自律制御システム研究所と共同開発したもの

クラブハウス側では、受注した商品を専用の箱に入れ、顧客が15番ホールに到着する時間に合わせてドローンに搭載し、配送指示を出す。ドローンが飛び立つと、顧客にはドローンが出発した旨を伝えるメッセージが届くようになっている。ドローンは受取所の目印を目がけて下降し、着陸して荷物を下ろす。同時に、顧客に荷物が到着した旨のメッセージを送る。

人口密集地域にもドローンが飛ぶ

配送用途では、実証実験ながら、ほかにも事例が出てきている。しかも、もっと身近なシーンでの活用例だ。具体的には、東京圏国家戦略特別区域である千葉市の「ドローンシティ構想」の実証実験。2016年4月11日、幕張新都心を舞台に、ドローンでの配送実証実験を行った。ショッピングモールや公園、マンションといった場所でのドローンを使った商品配送である。

楽天のそら楽は、ゴルフ場という広大な敷地の、人がまばらにしかいない場所でドローンを活用するもの。これに対して千葉市の実証実験は、人口が密集する場所で飛ばす点が大きな特徴である。ドローンを活用することで、モノをスピーディに配送できる環境を整えると同時に、物流コストを下げられる可能性がある。「将来的に住民が高齢化した場合の買い物支援、運搬支援なども視野に入る」(千葉市総合政策局総合政策部幕張新都心課の秋庭慎輔・特区推進担当課長)。幕張新都心には今後、超高層マンションの建設予定があり、買い物・運搬支援のニーズが生じる可能性があるためだ。

千葉市は都市部におけるドローン配送を2つの視点で捉えている。一つは水平方向の配送で、半径10km程度の範囲で海上を輸送路として使おうという取り組みである。もう一つは垂直方向の配送。地区内の店舗からの日常生活品の配達のほか、上空からの侵入者監視・追跡といったセキュリティサービスに向けたものである。遠隔診療・服薬指導後の、薬局からの医薬品配達も視野に入れる。遠隔医療と薬品のドローン配送を組み合わせることで、病院での待ち時間の負担軽減、高齢者などの利便性向上、さらに適切な治療・服薬による医療費削減を目指すという。

実証実験としては、それぞれのシチュエーションでの技術的な検証と、課題抽出のために2種類のシナリオを用意した。シナリオ1では、ドローンにワインボトルを1本積んで、イオンモール幕張新都心の屋上から、施設内にある屋外公園の指定位置まで配送した。シナリオ2では、10階建てマンションの目の前にある公園から薬を積み込んだドローンを飛ばし、マンションの屋上まで配送した。

遠隔医療とドローンという観点では、兵庫県養父(やぶ)市でも似た取り組みがある。2015年11月、市役所前の河川敷でドローンの飛行実験を行った。養父市の多くの地域は、いわゆる中山間地。高齢化も進んでいて、いわゆる“移動弱者”が多くいる。

ところが市内には、総合病院が一つしかない。このため、医療機関にかかりづらく、高血圧や糖尿病の患者は持病を重症化させやすい。そこで遠隔診療と医薬品の配達が必要になる。その準備として同市は、ドローンによる医薬品の配送を試みた。

用途 時期 主体 概要
配送 2016年4月 千葉市 ドローン配送の実証実験を実施。ワインボトルを積み込んだドローンをイオンモール幕張新都心の屋上から飛ばし、施設内にある屋外公園の指定位置まで配送(シナリオ1)。
10階建てマンションの目の前にある公園から薬を積み込んだドローンを飛ばし、マンションの屋上まで配送(シナリオ2)
2016年4月 仙北市 ドローンに約1kgの図書を積載し、小学校と中学校の間、距離約1.2km、高度約50mを自動航行
2016年5月 楽天 千葉県夷隅郡御宿町のゴルフ場「キャメルゴルフリゾート」内でのゴルフボール、飲食物などの配送
2015年11月 養父市 市役所前の河川敷でドローンの飛行実験を実施。高齢化が進んでいる中山間地における医薬品の配送を目指す
監視 2015年4月 北海道電気保安協会 太陽光パネルの点検・診断にドローン活用
2016年4月 中部電気保安協会 太陽光発電所の点検にドローン活用。電動二輪車「セグウェイ」も活用
2016年4月 エナジー・ソリューションズ 太陽光パネルの不具合発見サービスを開始
2016年4月 パナソニック AVCネットワークス社 インフラ点検ソリューションシステム(プロドローンと提携)の開発に着手
測量 2015年9月 鹿島 3次元図面製作を手掛けるリカノスと共同で、ドローンによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理、工事の進捗管理に利用するシステムを開発
2015年12月 岩崎(札幌市中央区) ドローンと3Dレーザースキャナーを併用して、屋根と外壁を完全に再現した3Dモデルの作成
2016年3月 テラドローン EV事業を手掛けるテラモーターズが設立。測量、点検、各種コンサルテーション、商業用ドローンの機体開発などの事業を手掛ける
2016年3月 エアロセンス(ソニーモバイルコミュニケーションズとZMPの合弁会社) ドローンを使ったインフラ点検の代行サービスを開始。土木・建設会社向けの「土量測量ソリューション」や、不動産管理会社などに向けた「定期点検ソリューション」など、ドローンによる計測、データ解析・活用、運用サポートを含めたサービスを提供
2016年4月 国際航業 ドローンで撮影した画像から簡単に3次元データを作成できるクラウドサービス「3次元空間解析クラウド」を開始
(表1)国内でのドローン関連の主な動き 従来の空撮のほか、物流、監視、3次元測量などの用途での導入例が増えてきた。