人間の代わりに救助に向かってくれるロボット

不幸にも災害に見舞われた場合、一刻も早く人を救出する必要がある。しかし、地震や土砂災害で崩壊した建物のがれきの中から人を探し出すのは大変だ。そういった現場で活躍するロボットも、国内外で研究されている。

米カリフォルニア州立大学バークレー校(UC Berkeley)では、米陸軍MAST(Micro Autonomous Systems and Technology)の支援を受け、ゴキブリの関節機構を参考にした圧縮可能な躯体を持つ捜索救援ロボット「CRAM」を開発している(写真3)。ゴキブリの生態を調べた同校の実験では、体の厚さが12mmあるゴキブリが、3mm程度の隙間を通り抜けることができた。その際、ゴキブリは体を平らに変形させ、脚を扇形に開いて移動していることがわかった。また、ゴキブリは自分の体重の900倍の力でつぶされても耐えることができた。ゴキブリが持つこのような機能を取り入れるために、CRAMには多数のパーツを組み合わせた骨格と柔らかい素材の殻が採用されている。こうした機能によって、災害現場では骨格と殻を平らに変形させて狭い隙間を通り抜け、被災者を捜索する。

(写真3)UC Berkeleyで研究されている捜索救援ロボット「CRAM」
(写真3)UC Berkeleyで研究されている捜索救援ロボット「CRAM」
狭い場所を変形してすり抜け、潰されてもすぐに原状回復ができる。(UC BerkeleyのYouTube動画から抜粋)

日本では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、タウ技研がワーム型機構を搭載したロボットを開発した(写真4)。がれきの隙間に入り、先端に搭載されたセンサーやレーダーによって、周辺の様子や被災者の呼吸などの情報を収集する。クローラーを持つ移動ロボットと、多関節ロボットの組み合わせで構成されている。通常は移動ロボットで移動し、移動ロボットでは走行が困難な急斜面や段差、がれきの隙間などを移動する場合はワーム型の多関節ロボットが使われる。現在は実証実験中で、2018年の実用化を目指している。

(写真4)タウ技研が開発したワーム型探索ロボット
(写真4)タウ技研が開発したワーム型探索ロボット
(NEDOのホームページから引用)

災害現場で人間を救出するためのロボットもある。プロジェクト・アイが開発した「人命救助ロボット」は、がれきの下から被災者を見つけ出すだけでなく、身長190cm、体重110kgまでの人間をコンテナを使って体内に収納し、災害現場から救出する。他にも、東京消防庁が装備する消防・救助ロボット「ロボキュー」も、消防隊員が進入困難な場所や状況下において、けが人を救助する。ベルトコンベア式のストレッチャーを使ってけが人を体内に収容すると、清浄な空気を排出して呼吸を確保する。

日本の被災地で活躍するロボット

実際には、災害時の支援活動では、地震だけではなく、台風による暴風雨や洪水といった自然災害が発生した際に、救助・復旧で、既にロボットが活躍している。

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターが開発した「Sakura」は、福島第一原子力発電所内の探査を行うために開発されたロボット。最も探査活動が困難とされる、原子炉建屋の地下施設などの情報収集を目的に設計されている。原子炉建屋の地下施設は、階段が急斜度である、階段・踊り場の幅が狭い、場所によっては空間が限られUターンのような方向転換が難しい、といった条件がある。ロボットは、これらをクリアして走行しなければならない。また、事故が起きた原子炉建屋内には放射線が飛び交っているため、ロボットの電子回路を放射線による破壊から守らなければならない。Sakuraはそういった厳しい条件をクリアしつつ、原子炉建屋内の状況を映像にして送信できるよう設計されている。この設計が熊本地震の際にも役立った。具体的には、Sakuraを倒壊の恐れがあった宇土市役所本庁舎内に送り込み、レーザースキャナーと複数のカメラによって、外からは見えない躯体の損傷状態を調査した(写真5)。

(写真5)倒壊の危険があるため、人間の代わりに宇土市役所に入る「Sakura」
(写真5)倒壊の危険があるため、人間の代わりに宇土市役所に入る「Sakura」
屋内の様子(右)がリアルタイムに送られた。(千葉工業大学提供)

災害支援活動では、2次災害を避けなければならない。そのため、千葉工業大学は三菱重工と共同で、防爆仕様となるSakuraの後継機を開発している。引火性ガスが充満した環境の中で、自らが出す電気火花や熱による爆発や火災の危険性を抑える。

災害の現場で活躍するロボットには、Sakuraのようにさまざまな環境で支障なく動作できる耐久性や信頼性が求められる。しかし、ロボットの操作性が悪いと、極限状態の中で操縦ミスを犯し動かせなくなることもある。そういったリスクを避けるために、「誰もが迷わずに操作できるように設計することも、災害支援ロボットに求められる重要なポイントになる」(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長 古田貴之氏)。