4日目に行われた決勝ラウンドには、「棚入れタスク」「棚出しタスク」の合計得点で上位となり、前日までの競技のいずれかで100ポイント以上を獲得した8チームが進出(表2)。アイテムが16個ずつ入った2つのトートが渡され、まず人間が手作業で1つめのトートのアイテムをストレージに収納する。次に、ロボットが残りの16個のアイテムをストレージに納めていく。全部納めきれなくても、時間がきたら作業は終了される。その状態で、オーダーの発注ファイルが各チームに渡され、ロボットはオーダーに従って、ストレージに入れられたアイテムの中から10個のアイテムを取り出し、決められた3つの箱に詰めていく。この競技では、ACRVチームが272ポイントをとって1位となり、以下Nimbro Pickingチームが235ポイントで2位、Nanyangチームが225ポイントで3位となった。日本からは唯一決勝ラウンドに残ったNAIST-Panasonicチームは、90ポイントで6位という成績を残した(写真3)。

(表2)決勝ラウンドに残ったチームとポイント

(写真3)日本から唯一決勝ラウンドに残ったNAIST-Panasonicチームのロボット
奈良先端科学技術大学院大学とパナソニックが連携したチームで、今回初めての挑戦となった。

ハイブリッド・マニュピレーションとディープラーニングで高性能化

前回までのAPCと今回のARCを見比べると、好成績を残したチームの取り組みを参考にしている様子が見て取れる。典型例が、アイテムをつかむ操作に使われる「ハイブリッド・マニュピレーション」である。これは、2016年のAPCで優勝したオランダのDelftチームが採用していたもので、アームの先端に吸盤とともに、アイテムをつかむ2本の指を取り付けた仕組み。ARCではほとんどのチームが採用していた(写真4)。硬いアイテムは吸盤で吸い付け、タオルや衣類のように通気性のよい素材や歯ブラシのように吸盤よりも小さなアイテムは指でつまむという具合に、アイテムの材質や形状に応じて取り出し方法を変えて、取りそこねの失敗を防いでいる。


(写真4)ほとんどのチームが採用していたハイブリッド・マニュピレーション

この競技の一番の難しさは、アイテムをつかむアルゴリズムにある。そもそも、物体は見る角度によって形が変わる。たとえば飲料水の缶などは、正面から見ると長方形だが上から見ると円形に見える。競技の前に個々のアイテムの形をロボットに認識させておいても、実際にそのアイテムが箱の中でどのような状態で置かれているかによって見え方が違う。複数のアイテムが重なっている場合は、さらに見え方が変わってくる。画像認識によるアイテムの識別は容易ではない。この形の判断に加えて、ロボットは、どこをつかんだら持ち上がるのかを判断しなければならない。「すべてのチームにとって、ディープラーニングの利用は必須となっているようだ」(ブレディ氏)。

各チームのロボットの動きを見ると、チームによってこのアルゴリズムに違いがあることが分かる。競技がスタートしても、アイテムを認識してつかみ方を決めるために、最初の数分間まったく動かないロボットもあれば、まずつかみにいって失敗を繰り返しながら最適解を探していくロボットもあった。また、つかんだ時にアイテムの重さを測り、事前のデータと異なっている場合は誤認識だと判断させるアルゴリズムを採用しているチームもあった。

次回の開催にも期待

ただ、興味深いことに、ほとんどのチームがハイブリッド・マニュピレーションを採用する中、Nanyangチームが、吸盤だけのアームを使いつつも、棚出しタスクで1位を獲得した。ARCの競技で好成績をとるカギは、ロボット自体のハードウエアやソフトウエアの進化に加え、視点や設計思想も影響しそうだ。

決勝ラウンドで1位となったACRVチームが作ったロボットについても、同様のことが言える。ACRVチームのロボットは、UFOキャッチャーのように3軸で動く機構を持つ(写真5)。これは、複数の関節を持ちさまざまな角度からアイテムを観察したりつかんだりできる他のチームのロボットと比べてとてもシンプルな構造といえる。これについてACRVチームのリーダーであるクイーンズランド工科大学主任研究員のユーシー・ライトナー氏は、「アームに関節があると、モーターのトラブルによってうまく動作しない可能性がある」と説明する。同チームが作成したストレージもシンプルで、他のチームのストレージには引き出しや蓋をロボットのアームを使って開け閉めさせるものもあったが、ACRVチームのストレージは蓋も付いていないシンプルな箱だ。

(写真5)決勝ラウンドで1位となったACRVチームのロボット
他のチームのロボットと比べてシンプルな構造を持つ。会場には緊急時にパーツが交換できるよう、3Dプリンターも持ち込まれていた。

コンテスト終了後は各チームの研究内容などが共有されるが、今回の結果を受け、次回のARCではどのようなテクノロジーを搭載したロボットが活躍するのか注目したい。次回の開催概要は今秋にも発表されるが、論文賞が設けられるなど、新たな試みが予定されている。