ハウステンボスに隣接する「変なホテル」。フロント、クローク、ポーター、コンシェルジュ、共有スペースの清掃と、ホテルの各種機能をロボットが担当することで世界から注目を集める。その名の由来通り、開業から1年を待たずに改善を加えつつ、次々に新たな取り組みも始めている。これらを含め、ハウステンボスでは今後さらに、人工知能、自動運転など最先端の技術を駆使した未来都市づくりを進めていく。

エントランスを入るとすぐにガラス越しに見える、あたかも産業ロボットのような機械。そのまま数歩進むと左手には恐竜や女性スタッフの形をしたロボットがある。ご存知、「変なホテル」である。長崎にあるアミューズメントパークのハウステンボスに隣接した、世界的にも珍しい”ロボットを使って運営するホテル”だ(写真1)。

(写真1)ハウステンボスに隣接する「変なホテル」(以下、写真の撮影は諸石 信)
(写真1)ハウステンボスに隣接する「変なホテル」
(以下、写真の撮影は諸石 信)

人口減少、高齢化、それらに伴う消費の停滞や労働力不足。国内の経営環境は厳しくなる一方である。広い市場を求めて海外に目を移すと、世界各地の並みいる強者との熾烈な戦いが待ち受ける。こうした環境を勝ち抜いていくには、それなりの武器が欠かせない。

変なホテルの場合、徹底してロボットを活用することによる高い生産性がその武器に当たる。ハウステンボスの澤田秀雄社長は「世界一生産性の高いホテルを実現する」と意気込む(写真2)。究極は、セキュリティなどの面から欠かせない人員1人(3交替としたら3人)だけで運営できるホテル。「これほど生産性、利益率が高いホテルはほかにないはずだ」(澤田社長)。

(写真2)「変なホテルは世界一生産性の高いホテル。これから世界に展開していく」とハウステンボスの澤田秀雄社長
(写真2)「変なホテルは世界一生産性の高いホテル。これから世界に展開していく」とハウステンボスの澤田秀雄社長

澤田社長の目に映っているのは、ホテル事業だけではない。目指しているのは都市全体の生産性向上。変なホテルはその一片に過ぎない。そのために、ハウステンボスを未来都市創造の実験場と位置づけ、ロボット技術や人工知能(AI)など思いつく限りの先端技術の研究・開発を進め、実装を試みようとしている。これからやってくるであろうロボティクス社会を先取りしたものといえる。

あちらこちらでロボットが働く

変なホテルでは、フロント業務以外にも様々な役割をロボットに任せている。例えばエントランスを入ってすぐに目につく産業ロボットのような機械はクローク係だ(写真3)。午前11時のチェックアウト後、午後3時のチェックイン受け付け開始前でも、手ぶらでハウステンボスのアトラクションを楽しんでもらえるよう、宿泊客の荷物を預かる(1回500円)。ガラス張りの部屋にあるロボットの向こうには、引き出し型のロッカーがある。受付端末で空きロッカーの番号を指定すると、クロークロボットが産業ロボットさながらに器用に向きを変えながら、引き出しを抜いて窓口まで運ぶ。宿泊客が荷物を入れ、収納するように指示すると、ロボットが逆の手順で引き出しを元の場所に納める。

(写真3)建物に入るとすぐに見えるクロークロボット
(写真3)建物に入るとすぐに見えるクロークロボット

フロントでロボットを相手にチェックインを済ませた後は、ポーターロボットの出番だ。ポーターロボットは荷台と音声案内用のスピーカー、操作端末を備えた、自動走行するロボット(写真4)。部屋番号を声に出して言うか、端末から入力するか、ルームキーをかざすかすると、ロボットが動き出す。防水・防塵などの性能上、現在はA棟内での利用に限られるが、荷物を運びつつ、宿泊客を部屋まで案内する役割を担う。部屋までは、床下に埋め込んだチップの信号をたどって移動していく。この際、進行方向をセンサーでチェックし、障害物があると自動的に停止する。また、後方もセンシングし、宿泊客がついてきていないと、やはり停止する。

(写真4)自走して宿泊客を部屋まで案内するポーターロボット
(写真4)自走して宿泊客を部屋まで案内するポーターロボット

部屋に入ると、ベッドサイドにはコミュニケーションロボットの「チューリーちゃん」が待っている。「いま何時」「部屋の温度は」「あかり消して」「クイズ出して」など、決まった言葉で話しかけると、質問に答える。照明のオン/オフも実行する。