「変わり続ける」を実践、世界にも展開

スタッフを減らす一方で、変なホテルの設備面の進化も止まらない。例えば2期棟のオープンと同時期に、1期棟のフロントまわりも機能アップした。変なホテルの名前に込められた「変わり続ける」というポリシーを実践しているわけだ。

当初はチェックイン操作などの際に、顧客に選択肢を提示して、番号ボタンを押してもらうやり方だった。言語も日本語だけ。これが今では、番号ボタンはなく、フロント係ロボットと受付端末の操作だけで済む。言語は英語、中国語、韓国語を加えた4カ国語対応である。現在は顧客情報を紙に書いて受け付けポストに入れてもらっているが、これもタブレットでの手書き入力などに置き換える考え。これにより、チェックイン時に顧客に強いる操作を一層簡略化できるという。

さらに今後考えられているのは、AIの活用である。顧客が何かを尋ねたくなった場合、現在はコールセンターで問い合わせを受け付けている。「1年間営業してきて、顧客が尋ねる内容がどのようなものかは、だいたいつかめてきた。これらの内容と対応する回答をAIに学ばせて、コンシェルジュロボットと連動させれば、ここも人手をなくせる。今、その準備を進めている」(澤田社長)。

「これからは、変なホテルを海外にも展開していく」
「これからは、変なホテルを海外にも展開していく」

このAI活用を実現できれば、コンシェルジュロボットだけでなく、フロント係、ポーターのロボットと連動させることで、サービス品質をさらに高められる。例えばポーターロボットが顧客を部屋まで案内する際、家族構成に合わせてイベントやおすすめアトラクションを紹介する、部屋の使い方などについて説明し質問に答える、といったことも実現できそうだ。もちろん、部屋で待っているチューリーちゃんがその役を担ってもいいだろう。

課題は言葉の認識率。今は英語はいいが、日本語だと認識率が少し落ちるという。「認識率が高まって、99.9%まできちんと回答できるようになってきたら、ほかのホテルにも展開していく。1~2年後にはできるだろう」(澤田社長)。そのときには、改善を続け、それぞれの地域に合ったスタイルを探りながら、海外にも変なホテルを作っていくという。

変わり続けるという点では、ほかにも取り組んでいることがある。エネルギー利用の効率化だ。例えば1期棟では、共有スペース、客室ともに輻射パネルの空調を採用している(写真7)。室温や設定温度に合わせて輻射パネルの中に冷たい液体、または熱い液体を流すことで棟内・室内の気温を調節する。夏場は、冷たい液体を流すことで室温を奪うと同時に、結露させることで湿度も下げる働きをする。急速に冷やしたい場合などに備えてエアコンも設置しているが、あくまでも補助的なもの。メインは輻射パネルだ。輻射パネルを使うことで、風が当たらない、騒音が出ないといったメリットも得られる。

(写真7)1期棟の共有エリアや部屋では輻射パネルを使って空調
(写真7)1期棟の共有エリアや部屋では輻射パネルを使って空調

一方の2期棟はCLT(Cross Laminated Timber)工法による木造建築。各部屋には輻射パネルを置かずに、通常のエアコンを設置している。代わりに、2期棟の電力は太陽光パネル+自立型水素エネルギー供給システムを使うことで省エネを図る(写真8)。通常は、客室棟の電力を屋根に設置した太陽光パネルで発電した電力で賄う。夏のよく晴れた日などには、それでも余剰が出るため、これを使って水素を生成し、貯蔵する。太陽光では十分な発電量が得られないときには、この水素を使って燃料電池から電力を供給する。こうすることで「できるだけエネルギーコストを抑えて運営できる仕組みを模索している。1期棟と2期棟で、あえて仕組みを変えているのは、実際に運用してみることで、どちらの方が節電効果が高いか、宿泊客のウケがいいかを検証するためだ。

(写真8)2期棟に設置された自立型水素エネルギー供給システム
(写真8)2期棟に設置された自立型水素エネルギー供給システム

次は「変なレストラン」、そしてエネルギー自給型の植物工場

前述したように、変なホテルはあくまでもハウステンボスが考える未来都市の一部に過ぎない。同社はこれからもチャレンジを続ける。変なホテルに続く第2弾になるのは、この7月16日にオープン予定の「ロボットの王国」。そこには「変なレストラン」を作る。変なレストランでは、接客だけでなく調理もロボットが担当する。ビュッフェスタイルだから、ひと皿ごとの美しい盛り付けは要らない。ロボットがカクテルを作るロボットバーを設けることも考えている。

その次に来るのは植物工場である。「これからの社会で大事なのは食糧とエネルギー。これは避けて通れない」(澤田社長)。そこで、大規模で極めて生産性が高い植物工場を実現しようと、ハウステンボス内で研究を続けている。変なホテルと同様に徹底して自動化・機械化を進めることで利益率を高める。ポイントは植物工場を運営するためのエネルギーコスト。「太陽光発電、蓄電池などを組み合わせて、エネルギーコストをできる限りゼロに近づける。そのために、次世代の蓄電池も研究・開発を進めている」と澤田社長の鼻息は荒い。

目をつけている先端技術・先進的な仕組みはほかにもある。例えば自動運転。園内を回るバスに自動運転を利用することを考えている。ドローンも同様で、既に同社内でドローン開発に取り組んでいる。また中国のDJIがハウステンボスにドローン体験用施設を作る話も進んでおり、ここを起点に様々な用途でのドローン活用の道を切り開こうとしている。