部屋の中を自律走行して床掃除してくれるロボットは、いまや家電の定番商品だ。しかし、今市販されている掃除ロボットにできることには限界がある。床のゴミ集めなど、いわゆる清掃はできるものの、部屋に散らかったモノを整理整頓することまではできない。ただ、画像認識、空間の使い方の組み合わせ計算といったことができるソフトウエア、モノを傷つけずに持ち上げたり運んだりできるロボットハンドなどがそろえば、部屋の片付けもできる進化した掃除ロボットも実現できそうだ。

家庭用掃除ロボットのほとんどは、床の上を動き回りやすいように小判型の平たい形状をしている。これらのロボットを利用する際には、事前に人間が床の上を整理整頓しておかなければ効率的に掃除できない。しかも、家庭用の掃除ロボットが取り除いてくれるのは小さな埃やちりなどで、あくまでも掃除機の代用である。

居間や寝室の床掃除くらいならば、今のような形状の掃除ロボットでも対応できるだろう。では、人間から掃除という家事の負担を取り去ってくれる未来の掃除ロボットには、どのような機能やスキルが求められるのだろうか。

そもそも、部屋をきれいにしたいと思ったら、床だけでなく棚や家具の上などに溜まった埃の掃除も必要になる。それには、アームなどによって高い場所の埃も吸い取るような機能が必要で、吸引できないような大きなゴミはゴミ箱に入れなければならない。さらに、床に散らばった脱ぎっぱなしの衣類を洗濯機に中に入れ、子供がばらまいた本やおもちゃなどを本来あるべき場所に戻す。

こういった作業のために求められるのが、ロボットが床の上に散らばったものを見て、それが何であるかを正確に判断し、しっかりとつかんでゴミ箱や洗濯機、本棚など所定の場所に戻す機能だ。これは、まさにAmazonなどが物流倉庫で活用するために研究を行っている、ピッキングロボットの機能になる。

ピッキングロボットは、機械学習などのAI手法を駆使した画像認識技術で物体の性質を識別し、材質や形状などからどのくらいの力加減でどのように掴めばいいのか判断する。その上で、アームなど使ってものをつかみ、あらかじめ決められた場所に運んで戻す。

Amazonは、ロボットにさまざまなアイテムを箱から取り出して移動させるコンテスト「Amazon Robotics Challenge(ARC)」を世界各地で開催するなど、ピッキング技術を習熟させる活動を積極的に行っている(写真1)。

(写真1)2017年に名古屋で開催されたARCで日本から唯一決勝ラウンドに残ったNAIST-Panasonicチームのロボット

汎用ロボットを利用した全自動のお片付けロボット

Amazonのコンテストでも優秀な成績を残しているPreferred Networks(PFN)は、2018年10月に「全自動お片付けロボットシステム」を発表した。ロボット本体はトヨタ自動車が開発し、研究開発用に提供している生活支援ロボット「HSR(Human Support Robot)」を利用し、PFNが開発した深層学習技術を搭載してシステムを実現した。

PFNのロボットシステムは、部屋の中に乱雑に置かれた洋服やおもちゃ、文房具など、家庭内にある数百種類の物体の位置と種類を識別する。そして、どの物体をどのようにつかみ、どこに片付けるかといった計画を立てて実行する(写真2)。

(写真2)PFNの全自動お片付けロボット
ロボットが画像認識によって物体を認識している様子(上)。ペンを片付ける際は、カメラでペン立ての位置を探し、ペンの向きを認識して向きを揃えてペン立てに入れる(下)。(PFNのホームページより引用)

ロボットが部屋の中の全ての物体の位置を把握しているので、探し物をロボットに尋ねれば位置を教えてくれる。しかし、このロボットの特徴はそれだけではない。家事を支援するロボットならば、誰もが利用できるよう、より直感的な手段でロボットに指示を出せる必要がある。全自動お片付けロボットシステムは、人の声による指示と指差しによるジェスチャーを理解する。これによって、人に依頼するのと同じようにロボットに仕事を指示できる。さながら人間の「お手伝いさん」のような感覚だ。