将来有人宇宙活動での活躍が期待されているロボットへの課題

現在、各国の宇宙機関が協力しながら進めようとしているのが、地球とISSの距離の約1000倍離れた月周回に位置し、月面探査のための中継拠点となる月近傍有人拠点「Gateway」の開発や、月面探査のミッションだ。これらのミッションにおいても、JAXAが培ってきたロボット活用のノウハウを生かそうとしている。

その際に取り組むべき課題としては、通信遅延への対応だけでなくいろいろと考えられる(図3)。例えば、人間の操作を前提に設計されたロボットでは、複雑な動作を行わせることが難しい。他にも、月面のように不安定な足場での移動や、GPSが利用できない環境での自己位置推定などの課題も解決しなければ、宇宙でのロボット活用は難しいだろう。

(図3)持続的な有人宇宙活動へのロボットおよびAI技術の導入課題(資料提供JAXA)
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(図3)持続的な有人宇宙活動へのロボットおよびAI技術の導入課題(資料提供JAXA)

このような課題を解決するキー技術として、JAXAでは通信遅延に対応可能な「遠隔操作システム、または自律制御技術」、複数の動作(摘んで引っ張るなど)を柔軟に組み合わせる「小型・多自由度・高出力ハンド」、対象物を確実に把持してハンドリングする「自己位置姿勢推定と力覚・触覚センシング」、そして無重力下あるいは不整地で「適切な作業ポジションへ移動する機能」などの実証実験を進めている。

通信遅延への対応としては、「今後、通信技術などが進化すれば状況は変わってくる」(JAXA 有人宇宙技術センター 主幹研究開発員 和田勝氏)。また、月での拠点建設工事など、地面を掘る程度の作業ならば、ある程度の曖昧さも吸収される。通信による制御を減らし、ロボットがさまざまな作業の判断をエッジで処理できるよう、ディープラーニングなどのAI技術活用も求められている。

海外では人型のロボット宇宙飛行士を研究中

(写真1)NASAとGMが共同開発した宇宙用ヒューマノイドロボット「ロボノート2」はアームを最大2m/sで動かし18k程度の物体が持てる(NASAのホームページより引用)
(写真1)NASAとGMが共同開発した宇宙用ヒューマノイドロボット「ロボノート2」はアームを最大2m/sで動かし18k程度の物体が持てる(NASAのホームページより引用)

海外では、宇宙における人型ロボットの活用を目指したプロジェクトもある。NASAのジョンソン宇宙センターでは、宇宙用ヒューマノイドロボット開発計画「ロボノート」が進められている。ロボノートは、宇宙飛行士とともに働くロボットマシンを作ることを目指したプロジェクトだ。ロボノートで製作されるロボットは、宇宙服を着た宇宙飛行士と同様の環境で、同じ工具を使って作業できるように設計されている。

現在、ロボノートは3代目まで開発されている。2代目となったロボノート2はGMの協力で製作されたロボットで、2011年にはスペースシャトルでISSに搬送され、宇宙での試験も行われた(写真1)。人型なので2本脚を持った形状になっているが、宇宙空間での利用を前提とされた脚であるため、重力がある場所で歩くことはできない。

一般的に、このような人型ロボットや多脚型ロボットの場合、小型だが大きな力が発揮できる油圧装置を組み込んで制御されていることが多い。だが、「宇宙では油が漏れると大変なことになるので、油圧系の制御は採用されず、すべて電気で制御されている」(和田氏)。

なお、JAXAでは宇宙でのロボット活用に関わる人材育成などの目的で、2020年から4年間「宇宙ロボコン」ともいえる、ロボット国際競技大会を開催する予定。「きぼう」にある無重力状態のロボットをプログラミングして、地上から操る精度を競うという。