自宅にいながら観光地を自由に歩いたり、釣りを楽しんだりする。遠隔から家事をこなしたり、単身赴任のお父さんが赴任先から自宅のリビングでくつろいだりする。そんな未来の社会が、徐々に現実のものになろうとしている。2020年を前にして、各社が本格導入を準備しているアバターロボットのサービスを見てみよう。

アバターロボットとは、一言で言えば人間が遠隔から操作をするロボットである。人間は実際にその場所に行くことなく、ロボットの身体でいろいろと体験できる。AI(人工知能)を搭載し、自分で考えて目の前にある障害物をよけながら歩く、自律走行型のロボットとは設計コンセプトが異なっている。

一見、AIを搭載した自律走行型のロボットよりも、アバターロボットの方が開発が簡単なように思える。しかし、実際には人間から送られてくる指示をリアルタイムに実行して体をコントロールしたり、逆にロボットが触った感触などをデータ化してリアルタイムに人間に伝える必要があったりするなど、インタフェースに関わる部分には高度な課題がある。その課題を解決するためには、ロボティクス、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、センサー、ハプティクス(触覚)、通信など、さまざまな先端技術を組み合わせなければならない。

一方で、遠隔から操作をするロボットと言えば、災害時に活躍するレスキューロボットなど、人間が近づけない危険な場所で活躍するロボットを思い浮かべてしまうかもしれない。しかし、アバターロボットの場合はもっと身近な存在として、日常生活の中で活用したり、エンターテイメント性が高いサービスと連動したりするなどのコンセプトを持ったロボットとしてのジャンルが築かれようとしている。

最近になって、そのようなコンセプトを持ったアバターロボットの実用化技術が進み、さまざまな分野で商用化を目指したサービスが立ち上がりそうだ。

アバターロボットのサービスプラットフォームを構築

ANAホールディングスは、アバターロボットのサービスを提供するプラットフォーム「avatar-in(アバターイン)」のサービス提供について、2020年4月からの開始を目指すと発表した。パソコンやタブレット、スマートフォンなどから、さまざまな場所に置かれたアバターロボットにavatar-inを通じてアクセスすることで、自宅にいながらのショッピング、日頃足を運べない市役所など公共機関の利用、病院のベッドからの水族館の見学など、さまざまな用途に可能性を広げようとしている(写真1)。

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(写真1)タブレットなどで行きたい場所を選んで移動するavatar-inのサービス例(「ANAアバター『newme(ニューミー)』ユースケース編 - avatar-in」より抜粋)

ANAホールディングスから発表された普及型遠隔コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」は、マイクとスピーカーが装備され、タブレット大の画面を備えて4輪で移動しながら周囲の人とコミュニケーションを図るロボットだ(写真2)。

(写真2)アバターインのサービスで利用されるアバターロボット「newme」は、高さが150センチ、130センチ、100センチの3つのサイズが提供される

一方でANAホールディングスはAgility Roboticsと提携し、屋外での活躍が期待される二足走行可能なアバターロボットの共同開発に向けた実証を行う。Agility Roboticsが開発する二足歩行型の自立走行ロボットは、階段の昇降や歩行経路の選択など高度な行動に加え、両腕で荷物を運ぶこともできる。

Agility Roboticsのロボットをベースに、ANAホールディングスが開発しているアバターのコア技術(視覚電送システム)を活用して2020年以降随時実証実験を行い、2021年を目処に人間が行けるところはすべて行けるような屋外型アバターロボットのサービス実現を目指している。

おもてなしに活用されるアバターロボット

日本航空(JAL)はインディ・アソシエイツの遠隔操作ロボットをベースに、空港での活用を想定したアバターロボット「JET(ジェット)」を開発した(写真3)。JALは2019年4月22日から4月24日まで、国土交通省および経済産業省によって開設された「Haneda Robotics Lab」と連携し、羽田空港の国内線第1旅客ターミナルでJETによる空港利用者案内業務のトライアルを行った。

(写真3)JALが開発したアバターロボット「JET」(JALのプレスリリースより引用)

JETの操作者はVRの技術を使い、ロボットの移動、腕と顔を動かすことによる感情表現、ロボットを介した空港利用者との音声通話を行う。また、この技術を活用すれば、出産、子育て、介護などの事情で在宅勤務をしている社員が、遠隔で業務を行えるようになることから、顧客へのサービス品質向上とともに社員の働きやすい環境づくりにも貢献できる技術としての検証も進める。

今後JALは国内外の空港でさまざまな案内業務を想定したトライアルを実施し、JETの活用方法を検証する。さらに、操作性の向上、案内業務以外への活用を目的とした機能強化を行い、2020年からの一部実用化を目指す。