東京オリンピックでの活躍が期待されるロボット審判

スポーツにおいて重要な審判の役割もロボットが担うようになっていく。そのための技術の研究も進んでいる。その一つが、2020年の東京オリンピックでの実用化を目指して富士通が開発している、体操競技の採点をサポートするロボットである(図1)。日本体操協会と連携し、今秋から実証実験を始める。採点は、3Dレーザーセンサーと骨格認識技術を応用。1秒間に230万回レーザーを射出し、人間の形や動きを立体的に捉える。その3Dデータを基に関節位置などの3次元座標を推定し、ひじやひざの曲がり具合を把握する骨格認識技術も活用する。目指すのは、競技の判定に必要な数値データをリアルタイムで抽出し、審判が採点の参考にできるシステムである。

(図1)富士通が開発を開始した体操競技の採点システム(富士通のプレスリリースより引用)

このような採点システムは従来から研究されていた。ただ、これまでのものは競技者の体にセンサーを装着して、モーションキャプチャーで体の動きを計測するシステムだった。このため、公式な大会で利用するには制約があった。これに対して現在開発しているシステムはセンサーを装着する必要がないため、演技の邪魔にならず、選手は通常の力を発揮することができる。まずは体操競技での実用化だが、フィギュアスケートなど他の採点競技での応用も開拓していくという。

米メジャーリーグでは全球団の本拠地球場に、スポーツビジョンが開発した投手の投球速度や投球軌道を追跡するスピード測定器システム「PITCHf/x」が設置されている。野球場に取り付けられたマウンドから本塁までの投手の投球の球速、回転したボールが空気の流れによって引き起こされる変化の量、リリースポイント、スピン量、本塁上を通過した時にストライクゾーン内に入っているかなどを追跡するシステムである。

2015年7月には米独立リーグのパシフィック・アソシエーションが、このシステムを利用。球審の代わりにロボットがストライクとボールを判定することを試みた。試合中は機械による判定をモニターで確認し、元メジャーリーガーがコールを行った。一方、メジャーリーグは2016年春から、試合中の選手の動きを細かく解析するシステム「STARCAST」を利用している。投手はもちろん、打者、そして野手と全選手の動きを即座に数値化することができる(写真5)。このシステムによって、ロボット審判の導入がさらに現実味を帯びてきそうだ。

(写真5)メジャーリーグが今春から採用した「STARCAST」
投手が投げたボールだけでなく打者が打ったボールのトラッキングも可能で、一連のプレーを即座に再現して解析することができる。

日本でも日本野球機構(NPB)主導のゲームオペレーション委員会が、審判の技術向上のためにPITCHf/xなどのトラッキングシステムについて導入の検討を始めており、東京オリンピックでの追加競技として野球が採用されれば、そこでもロボット審判が活躍するかもしれない。

ロボットを活用したユニバーサルスポーツが誕生

現存するスポーツの多くは、19世紀までに誕生した。20世紀になると、自動車産業と一体化したスポーツとして、F1などのモータースポーツが生まれた。そして21世紀。ロボティクスや人工知能などの産業が発達すると見られる今後の社会を想定し、それらと一体化する新しいスポーツを生み出そうとする機運が高まっている。キーワードは、年齢、性別、体格差、障がいの有無に関係なく、同じフィールドで競い、楽しむことができる「ユニバーサルスポーツ」だ。

日本では2015年、ロボットをはじめとするさまざまなテクノロジーを活用し、人の身体能力を超える力を身につけ、ユニバーサルに誰もが楽しめる新スポーツを創造する「超人スポーツ協会」が立ち上がった。例えば「キャリオット」と名付けられた電動モーター付きの乗り物を操る新スポーツ(写真6)は、手綱による微妙な操縦が肝になり「力まかせではなく、機械と対話しようとする人機一体の力が試される」(チームキャリオットの上林功氏)。超人スポーツは次々と公認競技を増やし、東京オリンピックに合わせて4年後には世界大会の開催を目指す。

(写真6)新スポーツ「キャリオット」は、インホイールモーターが組み込まれた1輪車にソリや車いすなどさまざまなものを引っ張らせて、スピードなどを競う競技。(「キャリオット」開発プロジェクトのfacebookより引用)

また2016年秋には、ロボット技術を応用し、障がい者同士が競技する初の国際大会「サイバスロン」が、スイスのチューリッヒで開かれる。スイス連邦工科大のリハビリロボットの研究者らが企画したもので、技術の進歩や障がい者の社会参加を促すのが狙いである。6種類ある競技には、「パワードレッグレース(強化義足レース)」や「パワードスーツレース(強化外骨格レース)」など、ロボット技術で強化された義足やスーツを装着してスピードを競う障害物レースなどがある(図2)。

(図2)障がい者のためのスポーツ大会「サイバスロン」の競技として計画されている、ロボットを装着した障害物レースのイメージ。(サイバスロンの資料より抜粋)

スポーツの世界におけるロボットの活用は、人間が不得意な部分を支援してもらうだけでなく、人と機械が一体化し、どれだけ自由に操って楽しむことができるかも重要になるだろう。