脳波で操作するパワードスーツ

パワードスーツは人間の能力を拡張させるだけでなく、失われた機能を補う役割も担う。フランスのグルノーブル大学などの研究チームは、四肢に麻痺のある男性が、脳波で操作するパワードスーツを使って歩くことに成功したと発表した(写真2)。

高さ12メートルのバルコニーから落下して脊髄を損傷し、肩から下が麻痺して歩くこともできない男性の頭皮と脳の間に、2つのセンサーを移植。センサーは脳に直接埋め込む必要がなく、被験者の動きと感覚をつかさどる「感覚運動皮質」の活動が読み取れる。

事故に遭った男性がコンピュータゲームのアバターを操作する訓練を数カ月にわたって繰り返した結果、自らの脳信号によってゆっくりと歩行し、思い通りに停止できるようになったという。現時点で脳波から操作できるパワードスーツは、天井からハーネスで吊り下げた状態だが、今後研究が進めば車椅子患者でも考えただけで歩行できるパワードスーツの実現が可能になると期待されている。

(写真2)脳波で操作する実験に成功したパワードスーツ(The Lancet Neurologyが制作したYoutube画像より抜粋)

失った人間の機能を再構築させるパワード義足

事故や病気などによって足を切断した人が付ける義足も、人間が本来持っていた能力を補完する道具だが、そこにも装着型ロボットの技術が活用されようとしている。

現在市場に流通している義足は、独自動力を持たないパッシブ型が主流だ。膝関節を伸ばしている時は支えてくれるが、少しでも関節を曲げると自律的に屈伸ができないために支えがなくなって転倒しやすくなる。また、自分の力で義足を動かすので疲労が溜まりやすく、階段の上り下りや椅子から立ち上がることも難しい。

こういった義足が抱える問題点を改善し、人間の足としてより自然に歩いたり階段を上ったりするなど、日常生活の中で違和感なく利用できる義足を開発しているのが、東京大学発のベンチャー企業BionicMだ。現在、ロボティクス技術を活用した義足を開発している。

BionicMが開発しているのは、生体メカニズムに基づきロボット技術と身体を融合させることで、軽量、コンパクトでかつ電動アシスト機能を備えた「パワード義足」だ。

パワード義足の中にはモーターやコンピュータだけでなく、さまざまなセンサーが搭載されている。それらのセンサーを使って、装着者が今どういう風に歩いているのか、次にどうしようとしているのかなどをセンシングする。そして、人間の動きに基づいてモーターを制御し、装着者にパワーを提供しながらアシストする。これによって、装着者は疲れにくく安心、安全に歩ける(写真3)。

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(写真3)従来の義足(左)とパワード義足(右)の比較。従来の義足では、膝関節の屈折が保持できないために段差などに引っかかって転びやすい(BionicMのホームページより引用)

また、従来の義足は自分の足で頑張って立ち上がるしかなかった。パワード義足では、義足も力を出すことによって、両足に体重をかけながら自然に楽に立ち上がれるようになるという。普通の人と同様に、交互に足を動かして階段を上ることもできる。さらに、センサーが集めたデータを学習することで、ユーザーごとに歩く癖やパターンを覚えて進化していく。

パワード義足はIoTデバイスにもなっている。インターネットと繋がることで、ユーザーにいろいろなメリットを提供する。例えば、歩行アドバイス。人間は左右の足に50%ずつ体重をかけているが、従来の義足だとなかなか義足側には体重をかけにくい。その結果、残っている足側に体重をかけ過ぎてしまい、長期的にはそちらの足にも障害が発生するという。そもそも義足ユーザーは、運動不足で体重が増えてしまう。なにもしなければ、負担が増えていくばかりだ。

パワード義足では、通信機能によって常に義足側に何%体重がかかっているのが見られるので、ユーザーに半分ずつ体重をかけられるようにアドバイスできる。他にも、「万が一ユーザーが転倒した時に、緊急連絡を自動的に行うなどの仕組みも検討している」(BionicM CEOの孫小軍氏)。

今後は義足にもデザイン性を向上させることで、ユーザーの個性に合わせたデザインや、ファッションとして着こなすようにできるものも作っていきたいという(写真4)。

(写真4)BionicMの創設者でもある孫氏自らも義足ユーザー。9歳の頃に中国で病気によって右足を切断してしまい、交換留学生として日本に来た時に初めて義足を装着した。実際に義足を使ってみるとさまざまな課題が見えて来たことから義足の研究を始めた(筆者撮影)