おもてなしロボットがコーヒーを煎れる常設店もオープン

じつは、「ゼロ軒めロボ酒場」も「Cave de Terreエビスタ西宮店 カフェロボット」も、ともにRethink Roboticsが開発した単腕型の協働ロボット「Sawyer」がおもてなしに活用されている。現在、Rethink Roboticsの日本総販売代理店である住友重機械工業とQBIT Roboticsの2社で連携して、「Sawyer」を活用したサービス業界向けロボットの市場開拓を行っている。

エイチ・アイ・エス(HIS)が東京・渋谷のHIS渋谷本店内にオープンした「変なカフェ」にも「Sawyer」が導入されており、期間限定の実証実験ではなく2018年2月から通常営業を続けている(写真4)。HISの主たる事業は旅行業だが、旅行を計画することから顧客に楽しんでもらおうと、店舗と隣接する空間にゆっくりと旅行のプランが検討できるカフェを作った。

(写真4)HIS渋谷本店内に常設された「変なカフェ」(撮影:元田光一)
(写真4)HIS渋谷本店内に常設された「変なカフェ」(撮影:元田光一)

カフェのおもてなしとして、同時に複数杯のドリップコーヒーが淹れられるアメリカ製のバリスタマシンをロボットに操作させて、コーヒーを提供している。ドリップ方式はコーヒーができるまでに時間がかかるが、本格的なコーヒーでおもてなしできる。コーヒーを淹れた後のフィルターの洗浄までもロボットが行うので、カウンターの中は無人で人は関与しない。

「変なカフェ」ではロボットが、バリスタマシンでドリップコーヒーを淹れてフィルターの掃除まで自動で行う。(撮影:元田光一)

当初は来店者がドリンクをオーダーする際、ロボットは固定されたメニューに対して決められたメッセージしか発信できなかった。そこで、HISでは2020年2月から「おもてなしコントローラー」を導入。ロボットが常に店舗周辺の状況をカメラで見渡し、店舗側の近くを通る人や椅子に座っている人を認識して、自ら積極的に声をかけられるようになった。「側を通るだけで話しかけられることによって、より親近感を与えられるようになった」(HIS 変なカフェ cafe担当 岡本修典氏)。

今後「変なカフェ」では、画面に表示されるロボットの表情を来店者に合わせていろいろと変え、会話内容を増やしてエンターテイメント性を高めながら、提供するメニューを増やしていく予定だ。

そもそもHISは2015年に長崎のハウステンボスに、ロボットが接客をする「変なホテル」を開業している(写真5)。「変なホテル」でのロボット導入の主な目的は人件費の削減による生産性向上だが、それならば単に自動化をすすめればよい。しかし、それだけでは味気ないホテルになり、おもてなしとは言えない。「利用者にいかに楽しんでもらえるかを考えた結果、恐竜型のロボットがフロントサービスをすると面白いと感じた。また、HISではホテル事業を第三の事業の柱と捉え、100軒のホテルを運営する計画がある。そこにロボットを導入することで、フロント業務をプログラム化でき、開業に要するスケジュールを早められる(エイチ・アイ・エス 本社経営企画本部 広報室 三浦達樹氏)。

(写真5)HISは2020年3月現在、全国で16軒の「変なホテル」を運営。写真は東京・⽻⽥で運営する「変なホテル」の接客ロボット(写真提供:HIS)
(写真5)HISは2020年3月現在、全国で16軒の「変なホテル」を運営。写真は東京・⽻⽥で運営する「変なホテル」の接客ロボット(写真提供:HIS)

分身ロボットによるおもてなしで障がい者の雇用を創出

分身ロボットを使って、人間が遠隔からおもてなしをするロボットカフェも期間限定でオープンされた。そこでのロボット活用の目的は人件費などのコスト削減ではなく、障がいを持つ人のための新たな雇用創出だ。

オリィ研究所とカフェ・カンパニーは共同で、身体が不自由であったり外出困難な人がパイロットとして遠隔操作型の分身ロボット「OriHime」「OriHime-D」を操作して接客を行う「分身ロボットカフェDAWN ver.β」を、2020年1月16日から1月24日まで東京・渋谷にオープンさせた(写真6)。

(写真6)「分身ロボットカフェDAWN Ver.β」の実施イメージ(カフェ・カンパニーのプレスリリースより引用)
(写真6)「分身ロボットカフェDAWN Ver.β」の実施イメージ(カフェ・カンパニーのプレスリリースより引用)

「分身ロボットカフェDAWN ver.β」は、新たなテレワークの可能性を模索する社会実験でもある。各地に住むALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病や重度障がいで外出困難なパイロットが、自宅や病室などのベッドの上から身長120cmの分身ロボットに搭乗し、遠隔操作で食事をサーブして会話をする。ロボットの走行自体は遠隔操作ではなく、床に引かれたマーカーの上を自律的にテーブルまで動く。

分身ロボットによるおもてなしは実際には人間によるおもてなしだが、ロボット活用の可能性を新たに広げる意味でいろいろと注目を浴びている。「分身ロボットカフェ DAWN Ver.β」の期間限定オープンは2019年12月9~15日に続き2回目だが、オリィ研究所ではこれらの期間限定オープンで得られた問題点や課題を解決し、2020年中に常設店にすることを目指している。