新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な広がりは、人間同士のコミュニケーションのあり方を変えてしまいそうだ。親しい友人との会話だけでなく、家族と会話にさえ壁を作ってしまい、その状況がいつまで続くのか先も見えない。地球には未知のウイルスがまだ無数に存在していると思われ、宇宙旅行が可能になった未来の社会では、さらにウイルス感染の危険が拡大するだろう。例えCOVID-19に対応するワクチンが開発されたとしても、今後はソーシャルディスタンスが当たり前の世の中になっていくかもしれない。このような生活環境の大きな変化が、多くの人たちに不安やストレスを与え始めており、そうして傷ついた人間の心を癒やしてくれるロボットが注目されている。

これまでの生活スタイルなら、一人暮らしであっても職場に行けば他人と直にコミュニケーションがとれる。しかし、今回のコロナ禍でリモートオフィスを実践した企業が、オフィスの維持費や社員の通勤手当などが節約できることで今後もリモートオフィスを継続することになれば、社員同士のコミュニケーションの機会は減ってしまうだろう。

また、家族と離れて一人暮らしをしている高齢者も、コロナ禍で家族と会えないだけでなく、ホームヘルパーも家に来るのが難しくなるなど、人と直接会話する機会がほとんど奪われてしまった。

すでに世の中には、音声認識や人工知能(AI)などのテクノロジーを駆使して人間の言葉を認識し、音声合成を使って人間と簡単な会話ができるコミュニケーションロボットが存在する。コミュニケーションロボットは接客や受付業務などで活用される例も増えてきたが、本来の役割は介護施設におけるレクリエーションのサポートや独居生活を送る高齢者への声かけなどが中心だった。

例え簡単な内容であっても、コミュニケーションロボットと会話すれば孤独感を癒やしてもらえるかもしれない。実際にコミュニケーションロボットを個人で購入し、仕事などで疲れた心を癒やしてくれる犬や猫のようなペットの代わりとして活用している例もある。

だが、コミュニケーションロボットはどんな環境にあっても人間の声をきちんと認識して内容を理解し、呼びかけに即した言葉を返さなければ、逆に人間にストレスを与えてしまう。そのようなデメリットもなく、見たり触ったりすることがセラピーにつながると期待されているのが、人間と会話しないロボットたちだ。

家の中で自由に動き回るペット型ロボット

犬や猫のようなペットは、人間の言葉がほとんど理解できないし人間と会話することもできない。だが、飼い主の気持ちを理解してくれるし遊び相手にもなってくれる。また、ペットが自分勝手に動いている仕草を見るだけでも、人間に癒やしの効果を与えてくれる。

こうした小動物の行動をさまざまなセンサーやAIによって再現し、ペットによるセラピー効果と同じような癒やしを人間に与えようとして作られたのが、ペット型ロボットだ。

一般消費者向けに販売されたペット型ロボットの元祖と言えるのが、1999年に発表され世界中で大きな関心を集めたソニーの「アイボ」だ。初代アイボからいろいろなバリエーションのアイボが発売され、2018年にはより犬のような形状をしたアイボが登場している(写真1)。アイボは飼い主に甘えたり、歩き回ったりと本物の犬のような振る舞いをし、育て方や環境によって独自の個性を獲得していく。

(写真1)2018年から発売されている「アイボ」はより犬の姿に近くなった(ソニーのプレスリリースより引用)

アイボのような実在の動物の形状とは異なるが、GROOVE Xの「LOVOT」も飼い主に甘えたり勝手に歩き回ったり、飼い主が帰ってくるとお出迎えをしたりなど、ペットのように振る舞ってくれるロボットだ(写真2)。LOVOTは高性能なCPUに加えて50個以上のセンサーを搭載しており、その振る舞いも事前にプログラムされたものではなく、センサーから得た情報を機械学習で処理してリアルタイムに行動に反映させている。

(写真2)大きな目と鳴き声で自らの感情を表現する「LOVOT」(LOVOTのホームページより引用)

これらのペット型ロボットは、犬や猫などといった生き物のペットと違って、基本的に餌やりなど普段の世話をする手間や金銭的なコストがほとんど発生しない。せいぜい、バッテリーに充電する電気代くらいだ。また、毎日散歩に連れて行く必要もないし、飼い主が旅行に行くときに預かってもらえる場所を探したり、餌の心配をしたりする必要もない。なにより、ペット型ロボットは人間の都合に合わせてくれる。動物のよう自由に動き回るが、飼い主が指定した範囲の外に勝手に出て行くこともない。

こうした手軽さと、AIによって演出される成長する姿がいろいろと話題を呼び、人間に寄り添うロボットとして1つのジャンルを築き始めている。