新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、さまざまな分野で生活様式が大きく変化している。このような変化は、これまで描いてきた未来社会の姿にも大きく影響を与えそうだ。実用化が待たれている自動運転技術によるモビリティも、これまで想定されてきた分野以外に活用の場が広がっていくかもしれない。

日本国内での新型コロナウイルス感染症の拡大は、自動運転分野においても実証実験の延期などの影響をもたらしている。一方で、2020年4月1日には公道での交通ルールを定めた「道路交通法」と、公道を走行する車両の条件を定めた「道路運送車両法」が改定され、公道上で「レベル3」の自動運転が解禁になった。

今回解禁されたレベル3の自動運転では、「ある条件下」ではドライバーがシステムや周辺状況を監視する義務から開放され、走行中にスマートフォンを操作したりできるようになったが、それでもいざという時に備えてドライバーは必要だ。新型コロナウイルス感染症が終息しても、人類が将来に渡って未知のウィルスの脅威に晒される可能性があるならば、物流分野などでは人間がまったく関与せずに荷物を運ぶ自動運転モビリティの開発も急ぐ必要がありそうだ。

物流分野で期待される無人の自動運転モビリティ

そもそも、物流・運送業界ではドライバー不足が加速的に進み、ITを用いた自動宅配・配送インフラの実現が重要課題となっていた。特に最近では、長距離トラックだけでなく、ラストワンマイルで家庭や事業所に荷物を運ぶ自動搬送ロボットの開発が進んでいる。ラストワンマイルの自動搬送ロボットとしては、大型ドローンの活用も研究が進んでいるが、都心や住宅密集地では運用が難しい。

そこで注目されているのが、無人の自動運転モビリティによるデリバリーロボットだ。デリバリーロボットの活用については2017年頃から注目され始め、すでに各国でさまざまなタイプのコンセプトカーが登場している。倉庫から荷物を運び出すだけでなく、スマートフォンのアプリで食品や日用品をオーダーすれば自分がいる場所まで届けてくれるデリバリーロボットや、その場で商品を見ながら買い物ができるコンビニエンスロボットなどが登場した(写真1)。これらの自動運転ロボットは近未来に向けたコンセプトカーと見られてきたが、コロナウイルス感染症の世界的な広がりを受け、早急に実用化に向けた取り組みを進めようとする傾向が見えてきた。

(写真1)オンラインで購入した商品を自宅まで届けるデリバリーロボット(上:Nuroのホームページから引用)とスマートフォンで呼び出してその場で買い物ができるコンビニエンスロボット(下:Robomartのホームページから引用)

日本ではディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸が2017年から2018年にかけて、冷蔵機能も持つ保管ボックスを車内に設置した専用の電気自動車(EV)車両を使用して、宅配便の荷物を受け取り手が希望する時間帯に希望する場所で受け取れるオンデマンド配送サービス「ロボネコヤマト」の実証実験を藤沢市で行った(写真2)。藤沢市の実証実験で使われたのは人が運転する自動車だったが、将来的には自動運転車によるサービスの提供も見込んでいる。

[画像のクリックで拡大表示]
(写真2)ロボネコヤマトのサービスでは利用者がメールで受け取ったバーコードをリーダーに読ませるか、暗証番号を入力して保管ボックスから荷物を取り出す(撮影:元田光一)