より進化したパターン認識でピッキングを実現するロボット

チームDelftの勝因はアームである。アイテムを取り出す方法として、大半のチームがアームに吸盤を取り付け、空気でアイテムを吸い付けていた。これに対しチームDelftは、吸盤のほかに、アイテムをつかむ2本の指を装備した。硬いアイテムは吸盤で吸い付け、柔らかいアイテムは指でつまむという具合に、アイテムの形状や材質に応じて取り出し方法を変えた。こうして取りそこねの失敗を防ぐことで、効率を高めた。

チームDelftはロボットの制御に、ディープラーニング(深層学習)を採用した。ディープラーニングは、私たちがものを識別する時の脳におけるパターン認識と似ている。2012年、Googleがディープラーニングで構成された人工知能にYouTubeの画像を見せ続けて学習させた結果、猫の画像を猫と認識できるようになったと発表して話題になった。このように、ディープラーニングは人工知能の特徴である自ら学ぶことを実現させる手法である。

さまざまなアイテムを多数の異なったアングルから撮影し、その画像データベースを作ってロボットに最適な取り出し方をシミュレーション学習させた(図1)。これによって、アイテムによって取り出し方をロボットが自ら的確に判断できるようになった。

なお、ピッキング競技で2位となったPFNもディープラーニングを利用。目の前のアイテムに対する最適なアプローチ位置を割り出すなどの制御を、ロボット自らに実行させた。

(図1)チームDelftが作った画像データベースには、さまざまなアイテムの特徴が収められている
チームDelftの説明画像より引用。

始まったばかりの倉庫ロボット戦争

倉庫でピッキングロボットを活用したいと考える企業は、アマゾンだけではない。Amazon Robotics以外にもさまざまな企業がピッキングロボットの開発に力を入れている。ソフトバンクなどから資金調達している米国のロボットベンチャーFetch Roboticsは、「Fetch」と呼ぶマニピュレーターと「Freight」と呼ぶ可動ベースの2つのユニットで構成されるシステムを開発した(写真5)。

Fetchはレーザーセンサーを使って倉庫の中をスキャンし、2次元と3次元のデジタル地図を作成する。このデジタル地図に従って、倉庫の中で障害物を避けながら自律的に移動する。またデジタル地図には、どの棚にどういった商品が配置されているかも登録する。Fetchがアームで棚から商品をピッキングし、それを併走するFreightに渡す。Freightもデジタル地図に従って障害物を避けながら自律的に移動し、受け取った商品を担当者に届けに行く。

(写真5)商品のピッキングを行うFetch (上)と商品を届けるFreight(下)
Fetch Roboticsのプロモーション映像より引用。

ほかにも、担当者と併走してピッキングを支援するLocus Roboticsのロボット、レーザーを利用して棚にある商品の個別の位置を特定してピッキングを行うMagazinoのインテリジェントピッキングロボットなど、種々なアプローチで倉庫における人間の作業を支援するロボットの研究が進められている。

(写真6)Locus Roboticsのピッキング支援ロボット(上)と行うMagazinoのインテリジェントピッキングロボットTORU(下)
Locus RoboticsとMagazinoのWebサイトより引用。