外見を人間に似せて作ったアンドロイドロボットは、映画やドラマの中では人間と良好な関係が結ばれ、社会の中に溶け込んでいる光景が描かれていることが多い。しかし、実際に映画のように完璧に人間の姿をしたアンドロイドロボットが完成したら、人々は簡単に受け入れられるのだろうか。すでに、人間のように2足走行できるロボット技術の目処は立っている。今後ロボットをより人間に近づけるために必要なのは、視線を合わせたり豊かな表情を作ったりする顔の作り込みであり、より人間社会に自然に溶け込ませようとする技術が研究されている。

アンドロイドロボットの身体を構成する機能として、2足走行は必須条件とも言える。実際に2足走行で歩いたり走ったりしているロボットを見ると、「中に人間が入っているんじゃないか」と思ってしまう人も多いだろう。

ところが、最近になってテレビやイベントなどでときどき見かける、人間の顔を持ったアンドロイドロボットを見ても、なにか違和感を覚える人も多いのではないだろうか。その理由はいろいろと考えられるが、まず1つは視線の問題だろう。声をかけても、なかなかこっちに視線を合わせてくれない。他にも、人間ならば人がいなくてもいろいろなところを見たり、瞬きをしたり、呼吸を整えたりといった仕草をするし、それらの仕草には理由がある。最近はロボットに、擬似的にそのような仕草をさせたりしているが、それはロボットにとってはほとんどが意味のない動作なので、逆に人工的な不自然さが目立ってしまう。

そもそも、アンドロイドロボットの役割とはなんだろうか。映画などで活躍するアンドロイドロボットは、外観は人間のままで人間を遙かに超えるパワーや計算能力を発揮して活躍する。とはいえ、高速に移動したり重いものを運んだりするのならば、人間型より適した形態があるだろう。そうした能力よりも、アンドロイドロボットに料理を作ってもらったり洗濯や掃除をさせたりなど、家事を手伝ってくれるような役割を与えるのならば、人間とコミュニケーションをとりながら濃厚な信頼関係を結ぶ能力が必須になってくる。その能力は家庭以外にも、さまざまな場所で人間と接し、情報収集することに役立つかもしてない。

人間と会話しながらいろいろな情報を収集し、その人が本当に必要としている要求に応じた仕事をする。あるいは、ショッピングモールやイベント会場などでより多くの人と接して情報を収集し、そのデータをなんらかのサービスやビジネスに活用する。医療の現場では、昨今のような緊急事態が起きて人手が足りなくなった施設において、看護師の代わりに患者からさまざまな症状を聞き出す。このようなシーンにおいては、無表情なロボットが機械的に接するよりも、人間のようなアンドロイドロボットが接する方が信頼性を築きやすいと思われる。

そうした場面で使われるアンドロイドロボットにとって重要な要素となるのは、やはり顔だろう。人間同士でも、相手の顔の表情などを見ながら会話をする。アンドロイドロボットが自然な表情で話を聞いてくれると、人はより多くのことを話したくなるかもしれない。そうした、アンドロイドロボットの表情に関する研究が、いろいろと進んでいる。

人間と視線を合わせるロボット

ロボットと人間が視線を合わせる技術はすでに実現されており、そうした技術を使えばロボットは人間と目を合わせながら会話ができる。とはいえ、人間同士が実際に会話している状況を考えると、相手の話を聞く時は目を合わせているが、話の内容を考えたり返答する言葉を探したりする際などは、視線を逸らす仕草をとることも多々ある。ロボットと人間とのコミュニケーションでも、単に視線を合わせたまま会話をするだけでなく、会話の内容や相手の反応などに合わせてロボットが視線を動かすような、自然なアイコンタクトを実現させようとする研究がある。

エンターテインメント用途で活用するロボット技術の研究を進めるディズニーリサーチが、カリフォルニア工科大学などと共同開発したのが、人間とアイコンタクトできるロボット技術「eye gaze」だ。ロボットがその場の状況や、相手の動きに合わせて視線を動かす。

ディズニーリサーチが開発したアイコンタクトできるロボット(ディズニーリサーチのホームページからYouTube動画を引用)

例えば、ロボットの前に人が立つと、頭をやや起こして視線を合わせ、人の動きに合わせて首を左右に動かしたりする。ロボットの前に複数の人がいればそれぞれに視線を送ったり、会話の途中にまばたきをしたりする。その他にも、目をしっかり開いたりまぶたを半分くらい閉じた状態にするなどして顔の表情を作っている。

もちろん、人間が会話中に視線をそらす行為にはいろいろと理由があるし、まばたきをするのも涙で目の表面に付いた小さなゴミを取り除いたり、目の表面の乾燥を防いだりするという生理現象であるので、ロボットにとっては無駄な機能と言える。とはいえ、ロボットだと分かっていても相手がこのような仕草をとることで、会話の相互没入感が高まり、深い関係性が築けるかもしれない。