20世紀最後の年となる2000年、本田技研工業(ホンダ)は2本足で自律歩行する人型ロボット「ASIMO」を一般公開した。宇宙服を着たような姿で二足歩行するロボットの姿を初めて見た時、多くの人が21世紀にはこんな人型ロボット(ヒューマノイド)が街中を歩いている光景が当たり前になるかもしれないと、夢を膨らませたかもしれない。しかし、ASIMOの公開から20年経った今でも、まだ街中で人間と一緒に闊歩するロボットの姿を見かけることはない。実際のところ、二足歩行ロボットの実用化に関する技術はどこまで進んでいて、どのような用途で活用されようとしているのだろうか。

新型コロナウイルス感染症によるコロナ禍によって、世界中で暗いニュースが続いた2020年の年末、ロボット達のキレキレのダンスが人々を楽しませてくれた。ソフトバンクグループから韓国の現代自動車傘下への移籍が決まったロボット開発企業Boston Dynamicsが、人型ロボット「ATLAS」やロボット犬「SPOT」、荷運びロボット「Handle」を使って、アメリカのポップナンバー「Do You Love Me」に合わせてダンスを披露してくれたのだ(動画1)。

(動画1)Boston Dynamicsが公開したロボット達のダンス(Boston DynamicsのYouTube動画より)

特に、ATLASはダンスをしながら片足立ちでバランスをとるなど、人間でも難しいと思われるさまざまなアクロバティックな動きを見せてくれる。こうしてステップを踏む姿を見ていると、Boston Dynamicsが実現しているロボットの二足歩行というテクノロジーの完成度の高さを感じさせてくれる。とはいえ、これらのロボットは綿密にプログラミングされた動作を忠実に演じているだけであり、自律的に二足歩行するまでには至っていないようだ。

二足走行ロボットの歴史

日本における二足歩行ロボットの研究は早稲田大学が1966年から取り組みを始めており、1971年には平地、斜面、階段の歩行と平地での方向転換を実現した、初の3次元自動二足歩行ロボット「WAP-3」が開発された(写真1)。

(写真1)早稲田大学で開発された二足歩行ロボット「WAP-3」(早稲田大学ヒューマノイド研究所のWebサイトより引用)

WAP-3は下半身のみで構成された、二足歩行を研究する機械のような形態だったが、ホンダが2000年に発表したASIMOは人型で、かつ人間の子供に近い体型(身長120cm、体重43kg)で二足歩行する初めての人型ロボットとなった(写真2)。

(写真2)ホンダが2000年に発表した人型二足歩行ロボット「ASIMO」(ホンダのプレスリリースより引用)

海外の二足歩行ロボットというと、やはりBoston DynamicsのATLASの運動能力に驚かされる(動画2)。二足歩行だけでなく荒れ地を走り抜けたりバク宙やパルクールを披露したりなど、さまざまな技を披露してくれる、エンターテイメント性の高いロボットのように思われているが、もともとは災害現場など、人が入って作業することが難しい場所で、人の代わりに行動するロボットとして開発された。

(動画2)Boston Dynamicsの最新動画では、ATLASが倒立前転したり身体をひねってジャンプしたりする様子が公開されている(Boston DynamicsのYouTube動画より)

アメリカでは他にも、オレゴン州立大学からスピンオフしたAgility Roboticsが二足歩行ロボット「Digit」を開発した。すでに2020年1月から販売を開始し、7月から出荷している(写真3)。Digitは最大18 kgの重さの箱を持ち上げたり積み重ねたりすることができる。階段を昇ったり歩行経路の選択をしたりなど高度な行動も可能だ。また、Digitはカメラやレーザー・センサーなどを使った半自律的な移動が可能で、誘導なしで箱を持ち上げたり、置いたりできる。ただし、障害物の回避のような移動には、遠隔操作システムを使った人間の助けが必要になる。

(写真3)2020年7月から出荷を開始したAgility Roboticsの人型二足歩行ロボット「Digit」(Agility RoboticsのWebサイトから引用)