バッタの耳を聴覚センサーにしたバイオハイブリッド・ロボット

昆虫は何億年もの進化の過程で、小型、軽量かつ多様な環境に適応してきた。その結果、独創的でシンプルでありながら感度の高いセンシング能力を手に入れた。そこで、昆虫の聴覚機能をそのままロボットに組み込めば、人工の聴覚センサーを越える感度を持つセンサーが低消費電力で実現できるかもしれない。

イスラエルのテルアビブ大学では、バッタ(イナゴ)の鼓膜をロボットに統合し、バイオハイブリッド・ロボットの一部として動作するプラットフォーム「Ear-Bot」を開発した。バッタの鼓膜器官は、広範囲の周波数に敏感で、神経系からの電気生理学的読み取りに優れているという。

バッタの耳の機能を体から分離しても維持させるために、取り出した聴覚神経と鼓膜器官は生理食塩水で満たされた特殊な生体機能チップに入れられる。このチップに接続されたワイヤーによって、バッタの耳から電気信号を取り出し、増幅してロボットの処理装置に伝送する。

実験では、生体機能チップからの信号を受信する電子機器類と、2つのDCモーターで駆動する車輪で構成されたロボットが使われ、動作は事前にプログラミングされた。このロボットに向かって、研究者が1回手を打って音を鳴らすとプログラムどおりロボットが前進し、2回手を打つと同様にロボットは後退した(動画3)。

(動画3)テルアビブ大学がバッタの耳を組み込んだバイオハイブリッド・ロボットの実験(テルアビブ大学の公開資料より引用)

このくらいの動作ならば、人工の聴覚センサーを使っても難しくない。この研究の目的は、生物システムの技術的な応用可能性を広げることだという。機械工学や電気・電子工学、情報工学は第2次産業革命以降大きく進化してきたが、生物が遂げてきた気の遠くなるような長い時間での進化と比べればごくわずかだ。

例えば、コンピュータのCPUはまだ人間の脳ほどの複雑な処理を瞬時に処理できないが、脳は電球よりも少ないエネルギーしか使わない。また、たった1グラムのDNAは、215ペタバイトのデータを保存できる。こうしたことから、テルアビブ大学の研究者は「生物のシステムは、電子システムに比べて無視できるほどのわずかなエネルギーしか消費しないことを理解すべきだ。しかも、それは非常に小型であるため、経済的で効率的である」と語る。