古来より、人間は空を自由に飛び回る鳥に憧れてきた。いつかは自分も空を飛んでみたい。そういう思いから、飛行機やヘリコプターなどの乗り物を生み出し、空を使って移動できるようにした。しかし、それらの乗り物と鳥を比べると、空を飛ぶメカニズムが大きく異なる。人間が手に入れたのはあくまでも空を利用した移動手段であり、鳥のように自由に空を飛ぶ手段を手に入れたとはいえないだろう。とはいえ、鳥のメカニズムを利用して空を飛ぶロボットの開発はいろいろと続けられている。

そもそも、空を飛んで長距離移動するなら飛行機があるし、空中に止まって地上を観察したり人命救助を行ったりするヘリコプターも日々活躍している。さらに、無人で飛ばして上空から地上の様子を撮影する、ドローンのようなロボットもある。なぜ今さら、鳥型ロボットの研究を続ける必要があるのか。

鳥のように羽ばたく機械を作って空を飛ぼうという構想は、16世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチが設計図を作ったことに始まり、18世紀末くらいまで研究が続けられていたようだ。その後、羽ばたいて飛ぶ機械を人が乗れるくらいの大きさにすることに無理があることが分かり、現在の飛行機のように固定翼で推進装置を積んだ乗り物の研究に移っていった。

一方で、鳥のように羽ばたいて空を飛ぶ機械の研究は続けられ、そのメカニズムをロボットに応用することで、飛行機やヘリコプター、そしてドローンの次に目指す新しい飛行体の開発も進められている。

研究が進む鳥の飛行メカニズム

古来から人間が憧れてきた鳥は、地上で獲物を見つけていきなり急降下したり、敵から逃げるために宙返りしたりするなど、さまざまな飛び方が可能だが、いまだに飛行機やドローンでもこういう制御は難しい。そこで、スタンフォード大学の研究チームは、鳥が翼を変形させることでどのように飛行を制御するかを理解し、新しい飛行制御の開発に繋げる研究を続けている。

研究チームがハトの翼を調べると、面ファスナーのような構造によって隣接する羽毛が互いにくっつき、翼を広げると羽毛同士がしっかり固定されて翼に溜めた空気が漏れないように隙間を防いでいることが分かった。このような構造によって、ハトは危険回避のための急な旋回や乱気流にさらされた場合でも、しっかりと空気を受け止めながら飛行が続けられることを発見。そのことを実証するため、研究チームは実際のハトの羽を使って翼を作り、ハトと同様の関節で制御しながらプロペラの推進力で飛行するロボット「PigeonBot」を作った。このロボットを使って、翼の変形の仕組みなどを調査している。

(動画1)スタンフォード大学が進めるハトの羽を使った鳥の飛行制御の研究(IEEE SpectrumのYouTubeページより引用)

欧州研究会議(ERC)の助成事業の1つに採択されたプロジェクト「GRIFFIN(General compliant aerial Robotic manipulation system Integrating Fixed and Flapping wings to INcrease range and safety)」は、鳥のように自由に飛行できるロボットを開発するための方法やツール、テクノロジーなどの研究・開発を目的としている。

目指しているのは、折り畳み式の翼を持ち、エネルギー消費を最小限に抑えて飛行しながら、脚を使って枝に止まったり、巧みな動きができるロボットだ。

(動画2)GRIFFINが公開した2020年2月から2021年2月までの研究成果(GRIFFINのYouTubeページより引用)

狭い空間を有効活用する鳥型ロボットの開発

ドイツの空気圧機器メーカーFestoが開発した自律飛行可能な鳥型ロボット「BionicSwift」は、体長44.5cm、翼幅68cm、重量42gという小さな体の中に、翼機構や通信システム、羽ばたきを制御するコンポーネント、ブラシレスモーター、2つのサーボモーター、バッテリー、ギアボックス、そしてそれら全てを制御する回路基板などを搭載している。

飛行環境は屋内を想定しており、複数機飛ばして編隊飛行することも可能だ。屋内には超広帯域技術(UWB)に対応したGPSモジュールがアンカーとして複数設置され、ロボットたちは互いに位置を特定しながら自分にとって安全な空域を認識する。一方で、各ロボットに装備された無線マーカーの信号がアンカー経由でマスターコンピュータに送信され、ロボット同士がぶつからないようにナビゲーションされる。また、ロボットの飛行経路も事前にプログラムでき、風や熱などの環境変化によって飛行経路から外れた場合には即座に自律的に飛行経路を修正する。

FestoがBionicSwiftの用途として考えているのが、屋内工場での活用だ。「工程の確認」や「部品や材料の輸送」などに機械の上部の空間などを利用すれば、工場内の限られたスペースを有効活用できる。

(動画3)Festoが開発した鳥型ロボット「BionicSwift」(FestoのYouTubeページより引用)