人間にとって、目はものを見て認識するために必要な感覚器である。一方で、人間の目のような機能を持つデバイスは、ロボットにも搭載される必要があるのだろうか。むしろ、ロボットには人間とはちがった機能を持つ目が必要であると思われるが、遠隔から人間にさまざまな体験を伝えてくれるアバターロボットの場合は、人間が持つような目の機能を必要としているようだ。

ロボットに必要なのは目よりもセンサー

世界中に広がった新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、日本人がもつ特異な習慣を海外にアピールすることになった。それは、日本人は口元が隠れてしまうマスクの装着に抵抗がないということだ。日本人は他人の感情を目から読み取ることがあるので、目さえ隠されていなければ、相手に対してそれほど警戒心を抱かない。それに対して、口元で相手の感情を読み取ることが多い西洋人は、マスクの装着に抵抗があるという。

では、ロボットにとって、目はどのような役割を持つのだろうか。工場や倉庫で活躍する産業用ロボットの場合、部品や荷物を掴むときにその位置や形を確認するために付けられたカメラが、目の役割をしている。一方で、自律的に移動するロボットの場合は、周辺の障害物を検知したり動線や道を探すために目が必要だ。ただし、そのための目には、赤外線やレーザー光、電波などを照射してその反射の度合いをもとに障害物の有無や位置、形を検知するセンサーが利用されることが多い。

これに対して、人間は左右1組となった目を使って、ものを認識したり距離感を計測していたりする。そのように、左右の目から得た情報でものを認識する能力は、人間が成長する過程で身につけた経験から得ているので、その認識力をロボットに一から教え込む手間を考えると、手っ取り早く障害物を避けさせるには、センサーを使った方が効果的なのだ。

自律移動する人型ロボットの場合でも、顔に目を付ける意味はない。以前このコーナーで紹介した人の顔を模したロボットたちも、目は付いているが人とコミュニケーションをとるための道具として使われているようだ(動画1、動画2)。

(動画1)ディズニーリサーチが開発したアイコンタクトできるロボット。このままだと、ロボットに対しては親近感よりも不気味さの方が強く感じてしまう(ディズニーリサーチのホームページからYouTube動画を引用)
(動画2)アーティストの藤堂高行氏が3Dプリンターで制作したロボットヘッド。目と眉毛の動きだけでさまざまな感情を表現している(藤堂高行氏のホームページからYouTube動画を引用)